夜る更けし、怪物出没注意 ページ8
Aがお登勢に拾われて、数週間が経過した。
スナックで提供される摘みや一品料理はかなり評判が良く、それ目当てに暖簾を潜る客も少なくないという。
馴染みの客は酒が進むと顔を赤らめ、女帝はここで潰れるんじゃないよと悪態をつく。
台所を城とする主は、そんなやり取りをBGMにしながら手を休めない。
これくらいでいいかな、とお通しを作り終えて一休みしていると、 たまがひょこっと顔を出してビールケースを片すのを手伝って欲しいと頼んできた。
そろそろエンジンが切れそうで、と話すたまに分かりましたと返して腰を上げ、積まれたケースを裏路地に出していく。
プラスチックのそれは存外軽く、所定の場所に出していれば業者が回収してくれるらしい。
それが何時頃なのかは知らないが、恐らく朝方くらいかな、などと考えていると、がたんと大きな音がした。
何かとビールケースを置いて行ってみると、一人の男性がうつ伏せになって倒れていた。酒を飲んでいるようで、アルコールがぷんと匂う。
こうした酔っ払いが道端で寝ていることは、駿河でも江戸でも変わらないんだなと嘆息しつつ肩を叩いてやる。
「大丈夫ですかー、もしもーし」
「ゔ……っつ…」
「もしもし、風邪ひきますよ。もしもーし」
「ぅえろっ…」
「ああ待って待って!! 吐かないでください!! 服汚れますよ!!」
蹲り嘔吐く男をその場に一先ず置き、スナックのバックヤードから廃棄予定の紙袋とビニールを引っ張り出す。
紙袋にビニールを開き、簡易的にゴミ箱を作って戻ると男性はまだ背を丸めていた。
「はい、吐いちゃってください」
「ゔ、ぁ……」
「……もしもし?」
「あ゙、ぁあ゙ッ……」
「え……」
もしや、急性アルコール中毒か。救急車を呼んだ方がいいだろうかと狼狽えると、腹を抱えていた男性はおもむろに立ち上がり、Aの腕を掴む。
急なことに驚いていると、月明かりが差し込み男性の顔を照らす。
その目は焦点が合わず、口からは吐瀉物ではなく泡を吹いていた。
咄嗟のことで声が出ないAを置き去りにして、男は力を込める。
ぎりっとした痛みに我に返り、掴まれた腕から振りほどこうとするも、動けば動くほど力が強くなる。
こうなったら、と草履を踏みしめると、突如として男が真横に吹っ飛んだ。
「ガぁっ!!」
「っえ」
自分はまだ何も仕掛けていない。にも関わらず、男は気を失った。
何がと確認する暇もなく、銀髪が月光を浴びる。
「坂田さん…」
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ😭 (4月7日 21時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 原作を守りつつ良い感じにキャラと関わる位置にいる感じ!言いたいこと分かりますかね? (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
わか - こういう設定好きです!!キャラとのほどよい距離感というか、食堂で働いてます!とか、保健室の先生です!とか、 (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
ユユユ - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます!無理せず頑張って下さい! (2021年2月7日 12時) (レス) id: 2ebf8b6b93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月29日 17時