スナックお登勢の新人さん【坂田銀時】

活動人間とダメ人間 ページ7

その翌日から、Aと万事屋の関わりの機会はぐっと増えた。気がした。

そもそも雇用されたのが最近のことで、スナックの表舞台に立つことはあまりなくほぼ裏方で作業していたのだから、顔を知らなくて当然である。

新しく入ったからと挨拶行脚をするような習慣は皆無、人の出入りが激しいかぶき町だからこそ新顔はいついてもおかしくない。

回覧板然り、朝のゴミ捨て然り。いつ何時に顔を合わせても不思議ではなかった。



「あ、おはようございます」

「おはよーさん、精が出んね」


店先を掃除していた新人は、早朝でも眠たげな素振りを一切見せなかった。

反対に銀時は低血圧で昼間から稼働するようなダメ人間の典型例であるため、朝は基本的に弱い。

古紙回収の水曜日に読み溜めたジャンプを捨てようとしたところ、 出くわしたのだった。


「早寝早起きってか？ 健康で何よりだよ」

「朝は弱いですけど、早起きはしますね。慣れてるので」

「なに？ どこぞの風紀委員みたく日の出と共に起きるの？ どっかの軍隊で育ったの？」

「朝稽古があったんです、うち」

「へぇ、道場かなんか？」

「はい」


曰く、実家は剣術と武道の道場で双方の朝稽古を始めるのにかなり早い時間に起床する癖がついたという。

家族の中では一番寝起きが弱いのだが、それでも日が登りきる前に起床している時点で充分活動的だ。


「大したもんだな」

「ありがとうございます。たまさんには敵わないですけどね」

「あいつ人間じゃねーから。同じベクトルで測ろうとしたらこっちもメカニックにならなきゃなんねーじゃねーか」

「そうですね。朝から灯油タンク持ってる時はびっくりしました」

「なに、あいつモップだけじゃなくて自分も火炎放射器になるつもりなの？ 火事とかやめてくれよ建て直すの大変なんだから」

「建て直したこと、あるんですか？」

「そうそう、ここにヤマトが突っ込んできたんだよ」

「見てみたいです、宇宙戦艦」

「上見てみろ、真夏の蝉ぐれーいんぞ」


駿河にはない江戸の文化は物珍しいようで、異形の艇やら天人やらは上京して初めてお目にかかったらしい。

神楽も天人だと説明するとかなり驚かれた。隣の屁怒絽さんは見かけから鬼神なのですぐに分かる。初対面では卒倒しかけたとか。


「そういやキャサリンも天人だっけな。あの猫耳団地妻」

「え、あれってそういうアイテムじゃないんですか？」

「あんな視力下がりそうなチャームポイント要らねぇよ」

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