銀色の保護者 ページ28
ボコボコにされたゴリラの行方は知らず。食べて飲んで喋ってを繰り返し、外の景色はすっかり夕焼けに染まっていた。
神楽は喋り疲れ、気がつけばごろんと畳に寝そべっている。
お妙も夕飯の支度が、とのことでお暇することになった。
神楽を背負い、玄関で靴を履かせて草履を履いた。
「本当に大丈夫?」
「はい。慣れてるんで」
「ならいいわ。またお喋りしましょうね、Aちゃん」
「はい。今日は楽しかったです」
「私もよ。
じゃあ、気をつけてね」
「はい。お妙さんも、戸締りしてくださいね」
「えぇ、またね」
お妙に見送られ、ゆったりした足取りで万事屋へ向かうと、遠くから太陽を背負った銀髪が見えた。
おや、と目を凝らすと、間違いなくそれは今背中で寝こける少女の保護者に相違ない。やや駆け足でこちらに来るところを見ると、迎えに来たのだろうか。
神楽を背負う自分を認め、速度を緩めてなんてことの無いように懐に手を入れた。
「よ、よぉ」
「パチンコですか?」
「新台は昨日出たっつぅの。全部スったわ」
「じゃあ、飲みに行かれるんです?」
「金ねぇっての」
「………お迎えですか?」
「……貸せ、重てぇだろ」
起こさないようにそっと背負い直し、前屈みになりながらよたよたと来た道を戻っていく。
Aも半歩後ろに続き、第二の家へと帰る。
「……あんま、見ねぇな」
「え?」
「それ」
「あ……あぁ、今日お妙さんとこに行くので、ちょっとお洒落なんかしてみたりして……」
「いんじゃねえの」
「ぅえ」
「女っぺーカンジ? いつもアレ、田舎の道場から来ましたみてえな服着てんだろ」
「いや確かに田舎の道場から来ましたけど」
「その色も、いんじゃね」
ぼっ、と火がついたような。
顔が火照るような、真っ赤になっている気がした。
「……小豆みてぇで、」
「え、そっち? 小豆色に見えるんですか。井村屋関係ないですよ私」
「誰もあずきバーの話なんてしてねぇよ。宇治銀時丼つう特別な丼があってだな……」
「え、丼? 小豆? おはぎみたいな感じですか?」
何が小豆だ。
普段は地味な稽古着で化粧っ気も無い女が、華やかな着物を着てお洒落に簪差していたら驚きもするだろう。
本音とは裏腹なことしか吐けない口をどうにかしてやりたい。
似合ってる、の5文字がなぜ言えないのか。
ああ、口惜しい。
「クッキー神楽ちゃんに持たせましたけど、坂田さん食べないでくださいね」
「なにそれ、拷問?」
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ😭 (4月7日 21時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 原作を守りつつ良い感じにキャラと関わる位置にいる感じ!言いたいこと分かりますかね? (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
わか - こういう設定好きです!!キャラとのほどよい距離感というか、食堂で働いてます!とか、保健室の先生です!とか、 (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
ユユユ - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます!無理せず頑張って下さい! (2021年2月7日 12時) (レス) id: 2ebf8b6b93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月29日 17時