かぶき町三人かしまし娘 ページ26
もはや炭というか燃え尽きたそれは食べ物には見えず、にこにこと薦めてくるあたり恐ろしい。
神楽も青ざめており、悪食と称される彼女でも手こずる品なのだと確信した。
その隣に出された自分の風呂敷が一気に空気を霧散させてくれた。浅葱色にして良かった。なんだかまともに見える。
風呂敷を解き、重箱をぱかりと開ければぎっしりと詰まった洋菓子の代名詞が顔を覗かせる。
クリーム色や茶色とカスタードのチェック、抹茶色、薄いちご色などのそれらが形を崩していないことに、内心ほっとした。
「まぁ、クッキー?」
「アイスボックスクッキーなんですけど、つまみ易いかなと思って」
「やっぱり、お登勢さんのところでお料理されてるだけあるのね。 私にも今度、作り方教えてもらえるかしら」
「はい、是非」
「売ってるモノみたいヨ!!」
そうして、なんとなしに始まった女子会はたいへん和やかなものとなった。
どこのスーパーの卵が安いだの、銀ちゃんが給料払わないだの、実家にいる家族が気になっているだの、ストーカーが煩いだのと年頃の女性にしてはやけに生々しいものが多いが、それで盛り上がるところはかぶき町女子ならではと言うところだろうか。
クッキーや市販の煎餅、カステラなんかを摘んではお茶で酷使した喉を潤す。
キャバクラに勤めているというだけあり、お妙は聞き上手だ。自分のことも話すが、場を回すのが上手い。褒めたりおだてたりもするが、きっちり自分の意見も言えるところも好感がある。話を促したり、別の話題に転換させることに長けている。
神楽はというと、喋りたいことがいっぺんにあるため怒涛の勢いで話す。あれがこれがと内容がごちゃ混ぜになっているが、なんとなく纏まっているところを見ると話したい事柄が綯い交ぜになっているのだろう。
Aは聞き役に徹しようと思ったが、お妙が話を振ってくれるところでちょいちょい話すことがあった。うんうんと反応を示し、エピソードを混じえて会話を繋げた。話したいことがいっぱいな神楽の話をまとめて解釈するところは、弟や妹の話を聞いた経験だろうか。
我が我が精神はあまりなく、話して聞いて、笑ってお菓子を食べて飲んで、という非常に穏やかな女子会であった。
話題がある程度尽きたところで、お手洗いはありますかと聞くAにお妙が出て右向かったらあるわと教えてくれた。
廊下に出て、言われた通りに道を進むと横切る人の姿。
それは紛れもなく、先程見た黒い影だった。
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ😭 (4月7日 21時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 原作を守りつつ良い感じにキャラと関わる位置にいる感じ!言いたいこと分かりますかね? (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
わか - こういう設定好きです!!キャラとのほどよい距離感というか、食堂で働いてます!とか、保健室の先生です!とか、 (2021年7月31日 19時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
ユユユ - めちゃくちゃ面白いです!続き楽しみにしてます!無理せず頑張って下さい! (2021年2月7日 12時) (レス) id: 2ebf8b6b93 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pillow | 作者ホームページ:
作成日時:2021年1月29日 17時