滝にまつわる昔話 ページ30
窓越しでも、滝の迫力は十分伝わってくる。
まっすぐ、青い水が日の光を反射しながら重力に従って落ちていく。
それが何段も何段も続いて、やがて川につながる。
「あの滝……どうやってできたか知ってるか」
私の横に座っていたアランが急にそう言いだした。
「え? いえ……」
「はじまりは、1本の弱い水流だった。
とてもじゃないけれど、あんな勢いになることは到底不可能だった」
いきなり語りだしたよこの人。
「別の地方からやってきたある少女は、その水流を見つけ、それに一種の憐みの感情を持ち、自分のパートナーの水ポケモンにあまごいをするように指示した」
「なんで、あまごいなんですか?」
みずでっぽうとか、ハイドロポンプとかのほうが良かったと思うんだけれど。
「まあ聞いてろ。
……やがてあまごいの成果が発揮され、連日雨が降り注いだ。
その少女が元の地方に帰った後も」
それ、すごいね……。長期的なあまごいかぁ。
「雨がたまり、弱々しかった水流は川となった。
川は日に日に勢いを増し、ここレンリタウンまでたどり着いた。
ただ、昔のレンリはほとんどが固い地盤でできていて、川はせき止められるほかなかった」
あれまあ。
「じゃあ、どうやって……?」
「水流を憐れんだ少女の行動を見ていた少女がいた。名をカレンデュラ。
カレンデュラ……通称カレンは、少女の行動に感銘を受け、少女の想いを受け継いだ。
平たく言うと、川の手助けをしたかったわけだ。
カレンはゼニガメをパートナーにしていた。ゼニガメはあまごいを覚えていなかったので、カレンは毎日ゼニガメに川に向かってみずでっぽうをさせた。
カレンとゼニガメは諦めることを知らなかった。どれだけ周りから無駄だと言われても、諦めなかった。
カレンのゼニガメが川に水を補給し始めた最初の日から一か月経った日、やっと川は再び流れた。
固かった地盤の一部は崩れ、粉々になって川の流れと共になった。
一度壊れると、それを皮切りに隣の地盤も崩れ、その隣も崩れ……残った岩盤に沿うように垂直に川が流れる。
ここで、川は滝となったんだ」
ずいぶん長い話だったが、まとめると、
「カレンちゃんの努力のおかげで滝ができたと、そう言いたいわけですね?」
「まあ、そういうことだな。
それと、カレン……カレンデュラは俺の母親だ」
え……!?
「あの滝は、お袋と、最初に水流に憐みの感情を向けた少女の、想いの結晶なんだ」
眩しそうに目を細めて滝を見つめるアラン。
24人がお気に入り
「アニメ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
頂志桜(サム)(プロフ) - 夢代ツバキさん» ありがとうございます!続編にまたぐ感じで、アランの計画が露見していきます!お楽しみに! (2016年10月16日 12時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
夢代ツバキ - 頂志桜(サム)さん» アラン、何する気なのかな?まさか、ピアノだったり・・・?ドキドキが止まんないです。頑張ってください (2016年10月16日 11時) (レス) id: 39392b36ad (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - ユーさん» ありがとうございます!優しいというか、過保護というか……。そんなところを気に入ってもらえると嬉しいです! (2016年10月14日 15時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
ユー - アラン、優しい!続き、楽しみです! (2016年10月14日 15時) (レス) id: fa9502f7ab (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 夢代ツバキさん» ありがとうございます! 寝てる最中にそんなことされてるとは、本人は知らないんですよね〜。本当はちゃんとそこらへんも掘り下げたかったんですけれど、何しろ話数がきついので……。 (2016年10月13日 21時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:頂志桜 | 作成日時:2016年9月30日 18時