百七十六話【TH】 ページ27
たまらずに笑い出した俺を、不思議そうに見つめるA。
「聞いてもいい?」
『何?』
「Aは…、
この国の皇女様?」
尋ねた俺に、彼女はきまり悪そうな表情を浮かべると、観念したようにゆっくりとうなずく。
『いつから気付いてたの?』
「うーん、結構最初の方。」
『…そう。』
俺だってそこまで馬鹿じゃないから、身なりを見ればどのくらいの身分かなんてわかるよ。極めつけはさっきの男の子たちの態度。
そこいらの貴族の娘に、あそこまではかしこまらない。
『…テヒョンはそんなに驚かないのね。』
「驚いたよ。」
『本当に?』
本当だよ。
こんなお姫様がいるなんて、驚くにきまってるよ。
馬番に馴れ馴れしく話しかけて、貴族にひっぱたくぞ、なんて脅しちゃうお姫様。
『じゃあ、テヒョンと私はこれからも友達ね。』
「え。」
『…嫌?』
「嫌じゃない!嬉しい。」
答えると、よかったーと嬉しそうに笑うお姫様に心が温かくなる。
この時はまだ、この感情が、友情とはまた別のものだなんてわからなかったんだ。
いっそのこと、
わからないままならよかったのかもしれない。
そしたら、今目の前で泣きそうな顔をしているお姫様を見て、こんなにも胸が痛むこともなかったただろう。
だけど、それでも。
叶わなくても、
届かなくても、
それでもいいと思えた。
俺はいずれ、国のために好きでもない女の人と結婚させられるんだと思う。
本来なら、恋をすることもなく人生を終えていく可能性だってあった。
そう思えば、
一方通行の想いだったとしても、
恋することができた俺はなんて幸せなんだろうって。
顔を見るだけで幸せになって、
彼女が悲しい顔をしていると俺も胸が痛くなる。
幸せな時間だけじゃなかったけれど、
切ない想いもたくさんあったけれど、
それでも…。
「前にも言ったけど、俺はお姫様に会えて本当に良かったよ。」
『…っ、』
皇子に生まれたことを何度も呪ったけれど、Aに出会うことができたから、この人生を選んで良かったと思えるんだ。
「幸せになってね、A。
どこにいても、
国は違うけど、
俺はAの幸せをいつも願ってる。」
『…、
うん…っ
私もテヒョンに会えて良かった…!』
ありがとう。
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d2y - 色々な作品を物色し見てはこの作品に戻り、、を繰り返し4周しました!とてもとても素敵な作品で、大好きです!もちろんbtsは最高ですが彼ら抜きでも良いと感じられる物語でした。ミロ様、いつも楽しい時間をありがとうございます!これからもずっと応援してます! (1月11日 12時) (レス) @page50 id: 9d014a95bc (このIDを非表示/違反報告)
はんだごて - 少し間を空けて2周しましたが、何度でも読みたい作品でした!!本当にお金出して見たくてせめてWiFi切りました!!!形に残してほしいほど貴方には才能があると思います。とても素敵な作品をありがとうございます!ずっとずっと応援してます無理なさらずご自愛ください (2022年9月15日 12時) (レス) @page50 id: 95ed82d62c (このIDを非表示/違反報告)
ソヨン - もう大好き過ぎます(;ω;)今回もたっぷり泣かせてもらいました! (2022年4月13日 16時) (レス) @page50 id: bd4a77815f (このIDを非表示/違反報告)
あられ - めっちゃ泣いた。ありがとう。 (2022年2月20日 18時) (レス) @page50 id: 99b69b2f94 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃもち - ジミンちゃんが切なすぎます。。。。涙が。。。。素敵なお話でした👏🏻💫 (2021年12月24日 16時) (レス) @page50 id: 2a9c6ecc5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミロ | 作成日時:2019年8月17日 22時