6つの色と色彩世界。【ワイテルズ】 (ページ40)

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『孤独』ページ40

～きりやんSide～

何回もキーを叩きすぎて、PCが壊れないか心配だ。
さっきのパスワードは20秒で解いた。

でも…

「あ～！これも違う…」
俺の演算用PCにはさっきから『不的確』の文字。
ようするに先程のシャークんのパスワード破りに失敗しているのだ。

「こんなの解き方知らねえよ⁉はあ⁉」
叫ぶ。

その、自分で発した言葉に何故か懐かしみを感じた。

「あ…」
そして、何故か淋しさ。
昔の。彼らとの記憶を、思い出したからこそ。

『こんなの判らねえよ！？』
『だー、きりやんこれはここをこうして…』

幼い頃。
勉強やこういうことでは唯一一回も勝てなかった彼の事。

あれ…。この暗号…。
昔、彼が出したのに似ている。

～
よくある話だ。

在り来たりではある。

だけど、「まさか」と思っちゃったんだ。

「スマ、イル？」
一瞬、腕が止まった。

～スマイルSide～
彼が俺の名前を呼ぶのが、耳のイヤホンから聞こえた。

「どうした？…アイン」
そして後ろから、同じく手が止まった俺を呼ぶ声。

アイン。ドイツ語で「孤独」だ。
どうしてこんな名になったか。

俺は孤児だからだ。

俺は、

後ろに居る、アウトランドの王に拾われたからだ。

この世界で奇跡の人と呼ばれる魔法使い。
闇魔法使いの孤児が、白魔法使いの黒の国の王に拾われる。

で、そのまま俺は逆らえない様に細工されて。
そのまま此奴の人形に成った。

挙句、きりやんがこちらの世界に来るのを止める為。
呪いと共に向こうに送られたんだ。

チャリ…。

腕の鎖が音を立てる。

「こうなる様に望んだのはお前の筈だ。こちらにお前があの白魔法使いを連れて来た時、俺と交渉したのはお前だろ？…お前の仲間を今から壊す事だって出来るんだぞ？」

『…スマイル。これ、お前が聴いてなかったらさ。ただの虚無に話しかけてるダサい奴だけどさ。』

きりやんが、俺に気づいた。
それは、判る。

『お前といつも知恵比べしたからさ。どうせお前、この状況下だったら盗聴器しかけるだろ？』
『ねえ、答え…教えろよ…』

ぽたり。涙が落ちる。

…自力で、考えろ。
ばれない様に、パスワードにヒントを付けた。

きりやんの記憶が戻れば、あの懐かしの難題を出せば。
思い出してくれるんじゃないかって思って。

でも、無理みたいだ。

「…で、次は何をすればいいんだ？」
「…そうだな、じゃあ次は……向こうの基地のトラップを逆起動して、敵を嵌めろ」
俺は何も答えずに、キーボードに再び手を乗せた。