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「こんなところで体力使ってる暇無いっつの……！」
服に付いた砂を払い立ち上がる。
「A？ 大丈夫ですか？」
百か……いや、人を選んでいる場合じゃない。どのみち最短でクリアしなきゃ体力の無駄なんだから。
「施設には……昼11時半までに着ければいいんだよね？」
「いいえ、12時半までですけれど……これでは……」
「ありがとう」
百が人の話を真面目に聞いてくれる人でよかった。これがきっと爆豪とかなら「知るか」で無効化されていたよ。その場合は別の使い方を考えるけれど。自分が聞いた情報に基づく明確な否定……これなら時間切れは無いだろう。
そもそも私の個性の時間切れは、直接的な身体能力強化の時くらいしか存在しない。羽が生えただのそういう場合は仕方がないが、今回は純粋に11時半までに着ければいいとしか言っていないから、その通りになるのだろう。
「A、そっちは遠回りじゃ……！」
皆とは違う方向に駆けていく私を心配する百の声が聞こえた。「私なら大丈夫」の意味を込めて手を振り、施設に向かって走り出した。
私の意思とは関係なく土を蹴り、草を分け、木を乗り越えていく。少し離れたところから、皆の声が聞こえてきたりしていたが、それも次第に遠くなっていった。
どのくらい1人で森の中を走ったのだろう。途中で道が合っているか不安になりかけたが、自分の個性を信じ続けた。私の個性……聞こえよく言うならば奇跡を起こすような個性だ。人は奇跡を信じるのに、まずは否定されなければ起こせないだなんて中々皮肉が効いている。これなら父親の【仮想実現】の方が強かったんじゃないかだなんて何度も思った。
父は根っからのロマンチストだから、その個性を持ってしてもヒーローより、元より興味のあった小説家を目指した。個性のお陰か彼の書くファンタジーは大人気らしく、母とは本の装丁デザインを通じて知り合ったと耳にタコが出来る程聞いた。
「……そろそろか」
少し先に光が見える。腕時計は11時32分を指していた。大凡個性の通りだ。森を抜けるとともに、動いていた足が止まった。随分久しぶりに太陽の光を浴びたような気がして目を細めていると、プッシーキャッツの金髪の方……ピクシーボブが駆け寄ってきた。
「ちょっとちょっと！ マンダレイ、1番乗りは女の子キティだよ！」
なるほど、子猫か。とりあえず個性の調子は良いみたいで良かった。
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りっぴい(プロフ) - 作品全部読ませて頂きました！質問なのですが、この作品のように字や背景を変えるようにするにはどうすればいいのでしょうか。 (2018年4月7日 0時) (
レス) id: 72a6f55e69 (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 冷やしチョコさん» 個性が好評のようで嬉しく思います。文才は……大変恐縮です。更新頑張ります！ (2017年8月29日 9時) (レス) id: b2aca56a6e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - ログインしたくない病さん» 評価だけでなくコメントまでしていただけて私はとても嬉しいです。ありがとうございます。 (2017年8月29日 9時) (レス) id: b2aca56a6e (このIDを非表示/違反報告)
廿楽(プロフ) - 牙夢さん» 今回は更新じゃなくて申し訳ありません。続編もお楽しみいただけるように努めたいと思います。 (2017年8月29日 9時) (レス) id: b2aca56a6e (このIDを非表示/違反報告)
冷やしチョコ - 文才があるってこういう事なんだな…としみじみ思います。個性のアイディアが面白いし、何より小説の内容が面白いです。更新楽しみに待ってます！ (2017年8月29日 0時) (レス) id: 691aea1734 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：廿楽
| 作成日時：2017年8月13日 3時
