照らすために息をしている (ページ22)

今日:62 hit、昨日:88 hit、合計:167,809 hit

21．迷子になれない陽だまりページ22

.

夜の水族館って不思議だ。
魚って夜は寝ているものだと思っていたけどそうでもないらしい。魚にも夜行性とかあるって今日初めて知った。

水族館に来るたびにAちゃんに
なにかを教えてもらっている気がする。

ほらあのオレンジ色の魚、ニモじゃなくてなんやったけ。

またAちゃんに教えてもらわないとな。

Aちゃんと水族館に来るのは付き合う前に来た以来で、なんだか感慨深いような懐かしい気持ちになる。

「水族館久々やね」
「うん、楽しいね」
「Aちゃんほんまに水族館好きやな」
「水族館というかクラゲが好きなの」

「この前1人で来たってゆうてへんかった？」
「友達が行けなかったからね！」
「諦めるとかはないんや」
「ないよ」
「ないんかい」

「純喜くんと一緒だと倍楽しいね」

青白く輝くクラゲの水槽に両手を付けて覗き込むように見上げる。

一番好きなのはミズクラゲだけど、最近はタコクラゲも気になっているらしい。

クラゲの話になると一気に饒舌になる。
最近は俺のおすすめ欄にまでクラゲの動画が出てくるようになった。

さっきからクラゲゾーンを何周もしているけどよく飽きひんな。

「クラゲゾーンめっちゃ虹色で綺麗やね」
「ね〜！眩しくないのかな～」

Aちゃんの着た白いワンピースがブルーライトに照らされてクラゲと同じように光って、歩くたびにふわふわと揺れる。

てか眩しくないのかなって何？めっちゃ可愛いな。

満足したのか、ちょっと離れて眺めていた俺のもとに戻ってくる。

当たり前のように繋がれる右手。

前に来たときは振り払われるんじゃないかってドキドキしながら手を繋いだ。

「なんかいつも付き合わせちゃってごめんね」
「ええよ、Aちゃんが楽しそうにしとんの見てるん楽しいし」
「え〜〜なにそれ」
「ほんまに思ってるよ」

「今度は純喜くんの好きなとこ行こうね」
「おん、川かな」
「また魚じゃん」
「ええやん」

「純喜くんって好きなお魚いる？」
「え～やっぱニモやな」
「だから～カクレクマノミだよ」

いたずらするような顔で俺に笑いかける。

その笑顔に何度も何度も恋をするんだ。

.