【探偵チームKZ事件ノート】無気力少女は知っている (ページ7)

今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:6,874 hit

6話ページ7

黒木side
零の逃亡２回目。
ほらね、やっぱりこうなった。
だから俺は、若武にちゃんと言ったのに。
－零は絶対、ＯＫしないよって。

＊＊＊

ピリリリリ…
ポケットの中で、スマホが音を立てる。
若武から電話だ。ちょっとめんどくさそうだな。
とは思いつつも、無視するほうが後々面倒になるのが分かっているので、俺は通話ボタンを押す。
黒「もしもし、若武先生。どしたの？」
若『ああ黒木。露木いるか？』
おっ、零をご指名ですか。
でも、残念ながら－
黒「零ならもう、帰ったけど？」
若『マジか…』
明らかに落胆した声が聞こえる。
分かりやすいなぁ。
若武は基本の性格が、真っ直ぐ過ぎるほど真っ直ぐだからね。
俺には少し、羨ましいくらい。
･･････ズルいなと思ってしまうのを心の隅に押しやって、俺は若武に話しかける。
黒「零に何か用？伝言くらいならするけど」
若『マジか！？』
今度は弾むような声。
すごいね、さっきと同じ台詞なのに。
黒「うん…で、何を伝えとけばいいの？」
まぁ、なんとなく予想はついてるけどさ。
･･････どうせ、零をＫＺに入れたいって言うんだろ？
若『…露木を、ＫＺに入れたい』
ほら、予想通り。
若『ＫＺのことを説明して、入ってくれるよう説得してほしい』
…それはもう、伝言の範中を超えてないか？
と返したくなるのを抑えながら、俺は返事をする。
黒「やるだけやってみる…と言いたいとこだが若武先生。零の返事は恐らくノーだ」
事実を淡々と並べていく。これで諦めろと思いながら。
若『･･････』
電話の奥で、若武が黙り込む。
これで諦めろ、若武。
俺は零を、こっちに引き込みたくない。
彼女にとって、人と関わることは、強いストレスを感じるものだから。

なのに。

若『…じゃあ、さ。俺が伝えてみるよ。落ち合おう、今どこにいる？』

ああ、俺は若武の性格が、羨ましいけど苦手だな。
ため息をひとつ吐いて、喉から声を絞り出す。
黒「…秀明の近くの、三丁目児童公園の前。そこで落ち合おう。じゃね」
そう言って、一方的に電話を切る。
俺は公園のベンチに腰を下ろして

拳を固く、握りしめた。

＊＊＊

結局零は、若武の口車に乗せられて、ＫＺに顔を出すことになった。
そして、すぐに逃げた。

若武、俺はお前を許せない。
お前は零のことを何も知らないのに。
昔のあの忌まわしい事件のせいで人間不信になっているあの子を

これ以上傷つけないでくれ。

あの日。
零のきれいな青い瞳は。

右眼の視力を、失った。