9話 ページ10
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その日の放課後、例によって机にへばりついて寝ていた私を起こしたのは珍しくトンちゃんだった。
完全に鬱くんだと思って顔を上げた私は、目に飛び込んできた予想外の顔に思わずガタンと派手な音を立てて椅子からのけ反った。
「あ…すまん、ビビらせた？」
「……なに？」
色んな意味でバクバクと音を立てる心臓を悟られないよう小声でそう返せば、彼は予想通り「今日一緒に帰ってもええか？」と窺うように私をちらりと見た。
なんの用事？なんて、放課後話しかけて来た時点で察しはついていた。
だけどこの誘いは、決して手放しで喜べる事でもない。
一年前はそれこそ、理由もなく当たり前のように二人並んで帰っていたけれど、今私達が並んで歩くには相応の″理由″が必要だった。それは、万が一『見られた』時のための言い訳だ。
その理由はいつも同じだった。
要するに、トンちゃんが私を誘う時は、いつも決まって私に相談事がある時だけだったのだ。
手放しで喜べないのは、その″相談事″の内容が、私のじゅくじゅくに熟れた傷口に正に塩をすり込まれるような内容だから。
だけど、それでもトンちゃんと並んで帰るには造作もない痛みだった。どんな理由でもいいからただ傍にいたい、というだけの思いで今日も私は彼の誘いを引き受け、今こうして隣に並んで歩いている。
「最近な、アイツの帰りが遅いねん」
「へぇ」
「ライン送っても、既読つくのが次の日やねんな」
「そう」
「……女って、彼氏に連絡も入れんと遊んどるもんなん？」
率直に言えば「知るか」の一言で済ませたいところではあるけど、トンちゃんの手前そういう訳にはいかない。
寝てただけじゃない？と返せば、はっと顔をあげて「よう分かるな、いつも朝そう返ってくんねん」と驚いたように言われる。
話半分で聞いていつつも、その朝返ってくる内容に、なんとなくその女が何か隠しているような気がしてならない。女は一概に『寝てた』を言い訳にする習性があるからそいつも例外ではないのかも、と思うと、嘲笑がこぼれ落ちそうだった。
そんな女なんて放って、私にすればいいのに。不安にさせるような女に縋って馬鹿じゃないの。
口の端が上がりそうで、慌てて指先で蓋をする。
とはいえ真面目な彼はアホみたいに真剣に悩んでいるから、私もアホの振りをしてそれとなく取り繕って返す。
______……あぁ、不愉快。
真剣な顔のトンちゃんを見て、じゅく、と疼いた火傷跡を無意識に爪で裂いた。
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ことこ(ドS娘)(プロフ) - ありがとうございます。あなた様のおかげで、ut先生とtntnの魅力に気づきました。 (2020年8月16日 12時) (
レス) id: 0a70119f62 (このIDを非表示/違反報告)
豚さん - 今日見つけて一気読みしちゃいました.....面白すぎます多分8回以上は号泣しました....『こっち向いて、先輩』もすっごく見てました!!ドロドロしてるのめっちゃ好きなのでめっちゃ面白かったです、これからもいろいろな小説の更新頑張ってください!!! (2020年6月12日 14時) (レス) id: dc625e2a67 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もう病み具合がちょうど良すぎて登校日なのに徹夜しちゃいました！あまりグロいのに耐性ないんですけど案外普通に読めました！これ読みながらとあるボカロ曲聞いていたら歌詞の意味が違って聞こえましたw (2020年5月26日 6時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
しき - あ、神でした (2020年5月25日 16時) (レス) id: 1586e9f170 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 完結おめでとうございます！いや…いい意味でゾクゾクしました…本当にゆららさんが書く小説どれも大好きなので読んでる時、ドキドキしながら次の更新を待っていました！新作も楽しみにしております…！、！！ (2020年5月25日 11時) (レス) id: 85216316b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年4月25日 0時
