42話 ページ43
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私の隣に並ぶトンちゃんは、ただ黙って私が煙を吐き出すのをじっと見ていた。
もう癖になっているのか、私の傷跡を指先で執拗に撫でるその指の感覚に、じんわり広がる鈍い痛みに徐々に意識はそちらに引っ張られてゆく。
「なぁ、A？」
「ん、」
「朝、鬱と何話してたん？」
「トンちゃんの話」
「えー？ほんまぁ？」
疑り深いトンちゃん。
眉を寄せて不服そうにする顔に比例して、傷口を刺激する指にも力が加わる。
「信じられへんねんけど、」
「ふふ、信用無いなぁ、私」
ふと見上げた顔。
その目には嫉妬の色が見え隠れし、私の胸の内もゾクリと震える。
「えらい楽しそうやったやんけ」
「そりゃ楽しいもん」
トンちゃんの話をするのが、という前提が付くけれど。
その前提を端折った私の言葉に、トンちゃんの目は予想通り鋭くなる。
同時に、腕にも鋭い痛みが走り、「ん、っ」と顔を歪めた。
「なんなんほんと……Aのそういうとこ、めっちゃ腹立つ」
腹立つ、なんて物騒な言葉とは裏腹、閉じられた私のシャツのボタンを解放し、その手でリボンを解いた。
「言うてたやんか、どこにも行かんて」
「いるよ、私。目の前」
トンちゃんの傍に、ずっといる。
幾度となく言った言葉を、今日もまた。
「分かるやろ？俺…もうAしかおらんねん…」
ぐちゅり、と音を立てるのは、裂けたカサブタから溢れた液体の上をトンちゃんの指が滑る音。
ぬるぬると滑る指は傷口からどろりと溢れる液体をすくい上げ、首の痣にそれを塗り広げた。
「はぁ、かわいい…………ほんまにめっちゃかわいいで、……俺のA、」
痛い、熱い、苦しい、_______気持ちいい。
矛盾した感情は嬌声となってこぼれ落ち、それを塞ぐように深く唇を絡め取られる。
そして私の手から最後の1本の煙草をひょいと取り上げたトンちゃんは、朦朧とする私の首筋にそれをジュッと押し付けた。
「ッ！ぁ、…やっ、！」
「A、こっち見てぇや…」
頭の中で痛みと快楽が弾け、グリグリとそれを押し付けられまた唇を塞がれる。
薄く開いた瞼の隙間、赤く染まる彼の瞳は私だけを映す。
意識がぼやける私の首に手をかけた彼に薄く微笑み、目を閉じる。
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「…………殺 しても、いいよ」
お互いを鎖で絡め合い、黒く染まる世界に溺れた私達は、
誰の手も届かないその場所に、二人で一緒に身を投げた。
【溺れる】
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ことこ(ドS娘)(プロフ) - ありがとうございます。あなた様のおかげで、ut先生とtntnの魅力に気づきました。 (2020年8月16日 12時) (
レス) id: 0a70119f62 (このIDを非表示/違反報告)
豚さん - 今日見つけて一気読みしちゃいました.....面白すぎます多分8回以上は号泣しました....『こっち向いて、先輩』もすっごく見てました!!ドロドロしてるのめっちゃ好きなのでめっちゃ面白かったです、これからもいろいろな小説の更新頑張ってください!!! (2020年6月12日 14時) (レス) id: dc625e2a67 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もう病み具合がちょうど良すぎて登校日なのに徹夜しちゃいました！あまりグロいのに耐性ないんですけど案外普通に読めました！これ読みながらとあるボカロ曲聞いていたら歌詞の意味が違って聞こえましたw (2020年5月26日 6時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
しき - あ、神でした (2020年5月25日 16時) (レス) id: 1586e9f170 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 完結おめでとうございます！いや…いい意味でゾクゾクしました…本当にゆららさんが書く小説どれも大好きなので読んでる時、ドキドキしながら次の更新を待っていました！新作も楽しみにしております…！、！！ (2020年5月25日 11時) (レス) id: 85216316b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年4月25日 0時
