37話 ページ38
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泥水をはね上げながら進む車を何台か見送った。
晴れの日より距離が離れているからか、雨の音で聞こえづらいからか、トンちゃんはここまで私に話しかけることは無かった。
家路へと続く駅前の通りを並んで歩く。
雨だからか、駅前にも人はまばらだった。
人が少ない方が鬱くんの姿が見えやすくてちょうどいい。
視界が開けるように傘をさし、周りに視線を這わせる。
キョロキョロと目を泳がせながら歩く私は、ふと隣でトンちゃんが立ち止まった事に驚き振り返る。
_______あぁなんだ、先に見つけちゃったんだ。
動きを止めたトンちゃんの視線の先を追う。
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「……………美香子、」
鬱くんと並んでこちらを唖然と見ている、その女。
そこから隣に視線を逸らし、目が合った鬱くんと小さく笑い合い、目配せし合う。
トンちゃんの口から小さく、小さく呟かれたその名前に、目の前の女は顔を真っ赤にし、「トントンくん、違うの！これはっ、」なんて慌てふためいている。
あぁ、なんて滑稽なの。
目の前で繰り広げられる茶番にとうとう声が漏れた。幸いにもそれは雨の音でかき消され、トンちゃんには届かなかったようで。
私は、ただ無表情でそれを見ているトンちゃんの手をそっと掴み、引き寄せた。
「…………トンちゃん、行こ」
私と一緒に、行こ。
底の見えない黒い場所で、いつまでも私と一緒に溺れていよう。
私の呟きに、振り返る。
足の向きを私の方向へと変えたトンちゃんは、何も言わずに私の手を握り返した。
そのまま歩みを進めるトンちゃんは、二度と女の方を振り返ることはしなかった。
私はちらりと鬱くんの方を見て、「ありがとう」と目配せ。それに鬱くんは小さく笑い、後ろ手にブイサインを送った。
ぬるま湯でもがいていた私を鬱くんはすくい上げた。約束通り、私を助けてくれた。
そして私は鬱くんの『助け』の末、計画通りトンちゃんを手に入れた。
愛に溺れる私の中に、彼の手を引き入れた。
後方から、「どうしてトントンくんも鬱くんも、あの女ばっかり！」とヒステリックな叫びが聞こえ、上がる口角を指先で押しとどめる。
負け犬には、せいぜい変態教師がお似合い。
高揚感から震える身体を落ち着かせるようにして、握ったトンちゃんの手をスリスリと撫でた。
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ことこ(ドS娘)(プロフ) - ありがとうございます。あなた様のおかげで、ut先生とtntnの魅力に気づきました。 (2020年8月16日 12時) (
レス) id: 0a70119f62 (このIDを非表示/違反報告)
豚さん - 今日見つけて一気読みしちゃいました.....面白すぎます多分8回以上は号泣しました....『こっち向いて、先輩』もすっごく見てました!!ドロドロしてるのめっちゃ好きなのでめっちゃ面白かったです、これからもいろいろな小説の更新頑張ってください!!! (2020年6月12日 14時) (レス) id: dc625e2a67 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もう病み具合がちょうど良すぎて登校日なのに徹夜しちゃいました！あまりグロいのに耐性ないんですけど案外普通に読めました！これ読みながらとあるボカロ曲聞いていたら歌詞の意味が違って聞こえましたw (2020年5月26日 6時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
しき - あ、神でした (2020年5月25日 16時) (レス) id: 1586e9f170 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 完結おめでとうございます！いや…いい意味でゾクゾクしました…本当にゆららさんが書く小説どれも大好きなので読んでる時、ドキドキしながら次の更新を待っていました！新作も楽しみにしております…！、！！ (2020年5月25日 11時) (レス) id: 85216316b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年4月25日 0時
