26話 ページ27
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それから数日経った今、私とトンちゃんは表面上何も変わらない。
ただ、あの日私に手を差し伸べたトンちゃんは、少しずつ、少しずつ私の方へ歩み寄っていた。
底の見えない黒い場所で溺れる私に、手を掴まれながら。
あの日から、トンちゃんは毎日私と一緒に帰ってくれた。教室では、いつも以上に話しかけてくれる。
それが単純な心配からくる行動なのか、私への気遣いなのかは、分からない。
ただ、一緒に帰っても、毎回持ちかけていた相談を私にする事はパタリとなくなった。
お互いそれには触れず、ただ二人きりの時間を穏やかに過ごしていた。
誰にも邪魔されず、トンちゃんを独り占めできる。
表面上の一時的な快感は、無意識に私の口元を綻ばせた。
「えらい楽しそうやな」
「隣にトンちゃんがいてくれるもん」
「別にいつもおるやんけ」
並んで帰る帰り道、トンちゃんは私を見て微笑む。
私だけに向ける笑顔。堪らなく愛おしい。
愛しさの数だけ、腕の傷が広がる。爪を立てたそこは、血が滲んでいる。
ピリリと脳に届く刺激に零れそうになった吐息を喉元へ押し込めた。
もう、トンちゃんの前でそれを隠すことは辞めた。
トンちゃんも、それについて言及することはなくなった。
たまにドロドロになっている腕を見て、「ちゃんと洗いや」と過保護にも私の腕を洗い流してくれる。
水が触れる痛みも私にとっては刺激なのだけど、それに声を漏らす度に患部を擦る手の力が強くなる事を、私は知っていた。
それがどういう意味なのか、私は少しずつ勘づいていた。
だから一緒に帰っている最中、空いた手をそっと握った。
抵抗する事もそれについて驚くこともしなかったトンちゃんは、ただ私の手を握り返した。
「Aの手いつも冷たいな」
「トンちゃんは暖かくていいね」
今まで、人との温度差に取り残された気がして寂しくなることが多かった。
だけど、トンちゃんの体温は居心地がいい。私の冷えた心に触れるその温かさが私の頭を溶かしていく。
トンちゃんの優しさがじゅくじゅくと熟れる私の胸の内に寄り添う度、また恋に落ちる。
また、傷口から愛がこぼれる。
無条件に触れても咎められないその手に、私はまた一人深く溺れた。
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ことこ(ドS娘)(プロフ) - ありがとうございます。あなた様のおかげで、ut先生とtntnの魅力に気づきました。 (2020年8月16日 12時) (
レス) id: 0a70119f62 (このIDを非表示/違反報告)
豚さん - 今日見つけて一気読みしちゃいました.....面白すぎます多分8回以上は号泣しました....『こっち向いて、先輩』もすっごく見てました!!ドロドロしてるのめっちゃ好きなのでめっちゃ面白かったです、これからもいろいろな小説の更新頑張ってください!!! (2020年6月12日 14時) (レス) id: dc625e2a67 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もう病み具合がちょうど良すぎて登校日なのに徹夜しちゃいました！あまりグロいのに耐性ないんですけど案外普通に読めました！これ読みながらとあるボカロ曲聞いていたら歌詞の意味が違って聞こえましたw (2020年5月26日 6時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
しき - あ、神でした (2020年5月25日 16時) (レス) id: 1586e9f170 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 完結おめでとうございます！いや…いい意味でゾクゾクしました…本当にゆららさんが書く小説どれも大好きなので読んでる時、ドキドキしながら次の更新を待っていました！新作も楽しみにしております…！、！！ (2020年5月25日 11時) (レス) id: 85216316b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年4月25日 0時
