2話 ページ3
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昼休みの喧騒に机に顔を伏せてそっと目を閉じる。
開かれた窓から湿気混じりのぬるい風が舞い込んで、閉じた瞼を撫でてゆく。
目を閉じても開いても、寝ても起きても、頭の中は大好きなトンちゃんでいっぱいだった。
私が今生かされているのはトンちゃんが生きているからだし、面倒な学校に律儀に登校し続けているのもそこにトンちゃんがいるから。
トンちゃんありきの人生だった。それが何故かと言われれば、ただ彼のことが好きだから。たったそれだけの事だった。
だけど、想いの強さとは必ずしも報われる訳では無いらしい。
今でも夢に見る1年前のこの時期、これまで通り一緒に帰っている最中に、トンちゃんはふと思い出したように私に告げたのだ。
何でもない事のように、数学の教科書貸してや、とでも言うようなテンションで、たった一言、『彼女できてん』と。
それは余りにも唐突で、なんの心構えもしていなかった私は当然ながらその言葉を真正面から浴びせられ、何も言えなかった。
血の気が引く、と言うより血も脳ミソも内蔵も根こそぎ持っていかれた感覚だった。要するに、生きる希望を見失った私は彼の放った無責任なその一言に『空っぽ』になったのだ。
私からトンちゃんのいる日常を奪ったその女と私の違いはたった1つ、トンちゃんに好きだと伝えたか、伝えていないか。
当然人間だから、自分の気持ちを他人に伝えるには口に出すことしか手段がない。今トンちゃんの隣で笑っている女は、トンちゃんに一言『好き』だと伝えた。でも私はそれをしなかった。
言わなくても分かってくれると思っていたわけではない。その時の私はどこかで「トンちゃんが私の前からいなくなることは無いだろう」と慢心していたのだ。
でも、実際は違った。
あっさり他人の物になった。あっさり私の知らない女に触れた。あっさり、私から離れた。
彼女が出来たことで避けられたりしたわけじゃないし、全く一緒に帰らなくなったという訳でもない。
けれどその半端な距離感が余計に私を辛くさせた。
半端に近くにいるせいで、想いが消えないどころか倍増するばかりだった。
ギリッと唇を噛む。いつもの癖で、二の腕の火傷跡に深く爪を立てた。
夏服の半袖では些か存在感を放ちすぎる濁ったその傷跡は、トンちゃんに彼女がいると知った日に自分でつけたもの。
良くなるどころか日を増す事に汚く濁ってゆくその跡は、まるで私の心情を表しているみたいだ、と自嘲気味に笑った。
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ことこ(ドS娘)(プロフ) - ありがとうございます。あなた様のおかげで、ut先生とtntnの魅力に気づきました。 (2020年8月16日 12時) (
レス) id: 0a70119f62 (このIDを非表示/違反報告)
豚さん - 今日見つけて一気読みしちゃいました.....面白すぎます多分8回以上は号泣しました....『こっち向いて、先輩』もすっごく見てました!!ドロドロしてるのめっちゃ好きなのでめっちゃ面白かったです、これからもいろいろな小説の更新頑張ってください!!! (2020年6月12日 14時) (レス) id: dc625e2a67 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もう病み具合がちょうど良すぎて登校日なのに徹夜しちゃいました！あまりグロいのに耐性ないんですけど案外普通に読めました！これ読みながらとあるボカロ曲聞いていたら歌詞の意味が違って聞こえましたw (2020年5月26日 6時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
しき - あ、神でした (2020年5月25日 16時) (レス) id: 1586e9f170 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 完結おめでとうございます！いや…いい意味でゾクゾクしました…本当にゆららさんが書く小説どれも大好きなので読んでる時、ドキドキしながら次の更新を待っていました！新作も楽しみにしております…！、！！ (2020年5月25日 11時) (レス) id: 85216316b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年4月25日 0時
