15話 ページ16
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閉じかけた瞼を持ち上げ、上から覗き込む彼の顔をじっと見つめる。ふわりと靡いた風が妙な沈黙を遮り、風で乱れた髪が顔にかかる。
それを退けようとすれば、先に髪に触れたのは鬱くんの手だった。
目元から髪を取り払い、離れていくと思っていた指先はそのまま私の髪を優しく梳いた。
「待って…なに？ほんとに」
明らかにいつもと違う鬱くんに訝しげに声をかける。
彼とは出会った瞬間からずっと″友達″のままで、その一線を超えたことは一度もない。
それなのに、今私を見ている彼の目と髪に触れる指先は。
どう見ても友達の一線を超えたその優しい2つに、私は戸惑っていた。
伺うように揺れた私の瞳に気がついたのか、我に返ったように鬱くんは口を開く。
「Aちゃんさ、まだトンちのこと好きやんな？」
「うん」
唐突なその問いは、頭で考えるより先に脊髄で答えていた。
反射的に肯定した後で、ふとなんで今更そんなこと聞くんだろう、と疑問が頭を過った。
「……今もまだ、死ぬ事考えとる？」
「え？」
風に乗って紡がれたその言葉に、思わず聞き返す。
一年前のあの日、もし鬱くんが屋上へ来ていなかったら、私はきっとここから飛び降りていた。
踏みとどまったのは、鬱くんが声をかけたから。
『助けたる』そう言った彼の言葉を私は今も尚、ずっと信じていたのだ。
「考えてないよ。……だって鬱くん、私の事助けてくれるんでしょ？」
悪戯に覗き込んだ瞳は、「…うん、せやな」なんて曖昧な言葉と共に揺らいで、胸騒ぎ。
なにか言おうと口を開いた私を遮るようにして、くしゃりと顔を歪めた鬱くんは呟いた。
「でもな、…Aちゃんが助かったら、俺が死ぬねん」
「………なに？それ、」
どういうこと？とかち合った視線に言葉を乗せれば、鬱くんは不意に私から目を逸らした。
「せやから、俺がAちゃんを助けてAちゃんの恋が実ったら、……俺の恋は実らんねん」
顔を歪ませ、自嘲気味に笑う。
なんで、いつから、なんて記憶を辿っても、トンちゃんの事しか見ていなかった私にそんなことが分かるはずもなかった。
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ことこ(ドS娘)(プロフ) - ありがとうございます。あなた様のおかげで、ut先生とtntnの魅力に気づきました。 (2020年8月16日 12時) (
レス) id: 0a70119f62 (このIDを非表示/違反報告)
豚さん - 今日見つけて一気読みしちゃいました.....面白すぎます多分8回以上は号泣しました....『こっち向いて、先輩』もすっごく見てました!!ドロドロしてるのめっちゃ好きなのでめっちゃ面白かったです、これからもいろいろな小説の更新頑張ってください!!! (2020年6月12日 14時) (レス) id: dc625e2a67 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - もう病み具合がちょうど良すぎて登校日なのに徹夜しちゃいました！あまりグロいのに耐性ないんですけど案外普通に読めました！これ読みながらとあるボカロ曲聞いていたら歌詞の意味が違って聞こえましたw (2020年5月26日 6時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
しき - あ、神でした (2020年5月25日 16時) (レス) id: 1586e9f170 (このIDを非表示/違反報告)
かな - 完結おめでとうございます！いや…いい意味でゾクゾクしました…本当にゆららさんが書く小説どれも大好きなので読んでる時、ドキドキしながら次の更新を待っていました！新作も楽しみにしております…！、！！ (2020年5月25日 11時) (レス) id: 85216316b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年4月25日 0時
