15話 ページ15
.
それからは鬱くんとコネシマくんとショッピくんの3人で意気投合したらしく、私を挟んで雑談に花を咲かせていた。
聞けば、ショッピくんは鬱くんの後輩だそう。意外な繋がりに驚く私に鬱くんは何やら不服そうだった。
「俺なぁ、ショッピくんには会わせたなかってんけどなぁ…」
「なんすかそれ。言うて鬱兄さんよりは誠実ですよ俺」
「だからあかんねん。コイツ俺しか知らんから」
誤解を生む言い方をやめろ！と本日何度目かわからない叫びも口に出す気力もなく、ただ黙ってスルーした。
鬱くんについて知ってることと言えば周知のクズ加減と好きな食べ物くらいしかないのに。
ため息をお酒で流し込んでいれば、「Aさん、言うたったほうがいいですよ」と聞き馴染みのない声に名前を呼ばれて思わず顔を上げる。
「迷惑や言うたらな伝わらへんよ、こういう人は」
「誰が迷惑やねん、合意の上やぞ」
ジト目で鬱くんを見ているショッピくんに名前を呼ばれたことに驚きつつ、勝手に合意させている鬱くんに「一応してないんだけどね」と言っておく。一応言っておく。
すると、黙って聞いていたコネシマくんが口を挟んだ。
「まぁ、Aは好きでやってんねんな？大先生のお世話」
「やってないから！無理やりだから！」
「あ、Aそんなん思てたん？ひどいわぁ｣
まるで傷ついていない声色で口を尖らせる鬱くんをばしりと叩いた。遂に手が出た。
「コイツ凶暴やねん、やめといたほうがええで」と何故かショッピくんにそんなことを言う鬱くん。やめるやめない云々は置いといて、凶暴という点は否定したい。
鬱くんの言葉に「そっすね、」なんて言うショッピくんにそうじゃない、と言いかけたものの、次に続いた言葉に私は口を噤む。
「大先生が嫌らしいんで、今日はやめといたりますよ」
は？と三者三様の顔を浮かべた私、コネシマくん、鬱くん。
『今日は』ってなんだ、と私が日本語の意味を頭の中で調べ直していれば、隣の鬱くんからスっと温度が消えた気配して思わずそちらを見やる。
「…………あかんで？今後も」
昨夜の晩御飯の最中に見たあの笑顔を浮かべていた人と同一人物とはとても思えないような冷えた顔を浮かべる鬱くん。
伊達に長年幼馴染をやっているわけじゃない私はその空気で一瞬のうちに彼が怒っていることを理解出来たものの、当のショッピくんは余裕の笑みを崩さず鬱くんを見ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 836人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
