14話 ページ14
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不貞腐れつつお店に入り、程なくして鬱くんも現れる。
私と目が合うや否や当たり前のように私の隣に腰を下ろす鬱くんに小言のひとつでも言ってやろうかと思ったけれど、家に帰ってからでも遅くないと踏みとどまる。
知らない顔と知っている顔が半々のメンツが揃い、自然と私は顔見知りのコネシマくんとばかり喋ることになるのだけど。
「ショッピくん、コイツには気ぃつけなアカンで」
「はぁ。どの辺に気ぃつければいいんすか」
「ねぇ。余計なこと言わなくていいから」
そのコネシマくんの向かいに座るのは見たことがない顔で、『ショッピくん』と呼ばれた彼はコネシマくんの知り合いらしい。
初対面の彼に何やら余計なことを吹き込もうとしているコネシマくんを肘でつつくも、彼はそんな静止に耳を傾ける男ではない。
「コイツな、付き合う男みんな能無しのクズに変えてまう能力持っとんねん」
「なるほど」
「なるほどはおかしくないか?」
せめて言わせろ、と間髪入れずに突っ込めば、じゃあもしかして、とコネシマくんから私に視線を移したショッピくん。
本日初めて絡んだ視線と、テーブル越しに見たその顔が思っていたより整っていたことに年甲斐もなくたじろいでしまう。
「………もしかして、大先生と付き合ってます?」
「今クズだからってだけで判断した?」
というより、周知の事実なのか、鬱くんのこれは。
途端、鬱くんが何か誤解を招くようなことを周りに吹き込んでいないかと心配になる。
私を『ガードが緩い』なんてコネシマくんに言っているくらいだから、まさかこの歳になって一緒のベッドで寝ている挙句に不純なことは一切無い、などと言いふらしていないだろうかと余計な心配と冷や汗が止まらない。
何か言ってよ、と助けを求めるような気持ちで隣に座る鬱くんを見上げれば、先程まで向かいの美人と喋っていたはずの彼はじっとこっちを見ていた。
「え〜、俺ら付き合っとるふうに見える?」
「やめて、寄ってこないで」
ぐっと私に身を寄せる鬱くんを周りは『いつもの鬱くん』として処理しているらしいけど、私は悲鳴が出そうだった。
ふざけるより先に否定しろ!と目で訴えるも、気づいているはずなのに楽しげにニコニコと笑っている。確信犯!
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです(笑)tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます&ありがとうございますっ!!凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください!! (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます!生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…!次回作も楽しみにしています! (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆらら | 作成日時:2020年3月22日 1時