45話 ページ45
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夜も更けた午前0時過ぎ、程々にお開きになりそれぞれ家路に着いていた。
「あ〜あいつほんまに腹立つわぁ！Aに内緒や言うてたのに」
そして当たり前のように私と同じ終着点へ向かおうとしている鬱くん。
ご飯を食べた後でも家に来ていい理由が出来てしまったのは、ますます私が彼を許してしまう要因になりかねないな、とぼんやり考えた。
一人でブツブツとしかめっ面で何事かを呟いている鬱くんは、先程ショッピくんが暴露した色々が私の耳に入ったのがお気に召さなかったらしい。そのしかめっ面を覗き込んで、クスッと笑う。
「鬱くんて、意外と女々しいとこあるんだね｣
「気にしてんねん。かっこ悪いやんか」
「そうかな？」
他の誰か複数名を梯子しているエピソードよりはよっぽどかっこいいのに、と思う私はもう既に鬱くんに対しフィルターがかかっているのだろうか。認めたくはないけれど。
「………私は、嬉しかったよ？」
普段の鬱くんを知っているから、尚更だった。
どうせ鬱くんは私に固執しているわけじゃないから、と寂しいことを考えていた私にとって、それはまさに言って欲しかった、求めていた言葉だった。
ちゃんと鬱くんが私を必要としてくれて、その理由に″好きだから″という感情も含まれていることは、もう何にも代えがたい喜びだった。
黙っていた鬱くんは、そっと私の手を握る。
「俺な、ちゃんとAに好きになってもらいたいねん」
ポツリとそんなことを言う鬱くんは、私が未だ鬱くんに対し″好き″という言葉を使っていなかったことを気づいていた。
だけど、私はもう薄々感づいていた。
「………私きっと、最初に鬱くんがご飯食べに来ること許した時点でもう好きだったから」
『鬱くんだから』許せた。『鬱くんだから』嫌じゃなかった。
それは、きっと最初から鬱くんを特別に見ていたからに他ならない。
キュッと手を握り返してその手を引き、身を寄せた私に鬱くんは微笑む。
「俺やって、Aやから飯作ってほしいって頼んでんで」
そう言った彼もまた、私を特別に見ていた。
身を寄せ合う深夜0時、空に広がる藍は私たちを見下ろしていた。
藍に見守られながら、彼の愛は私をそっと包み込んだ。
【藍の香り】
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赤月セレン(プロフ) - コメント失礼します。物凄くお話にのめり込んで一気に読んでしまいました…とても良くてもう好きです（笑）tnさんの方の小説も楽しみに読ませて頂きますね。素敵なお話をありがとうございます、更新お疲れ様でした。 (2021年3月6日 22時) (
レス) id: f86cb701a2 (このIDを非表示/違反報告)
宙(プロフ) - ずきゅん (2020年8月28日 1時) (レス) id: a1083db659 (このIDを非表示/違反報告)
おいちこ(プロフ) - 完結おめでとうございます＆ありがとうございますっ！！凄い、素敵でした...2人が幸せに結ばれて、私も幸せですぅ...ニヤニヤ止まんなかったですぅ...新作も読ませていただきますぅぅ...!!!!更新、頑張ってください！！ (2020年4月25日 13時) (レス) id: 5a28085a2a (このIDを非表示/違反報告)
やち(プロフ) - 完結おめでとうございます！生活感のある日常に散りばめられたもどかしさと時々挿まれるドキッとする描写のバランスがたまらず、更新のたびにとても楽しく読ませていただきました。ゆららさんのsyp君がまた素敵で転がるほど好きでした…！次回作も楽しみにしています！ (2020年4月25日 6時) (レス) id: 6f58a85157 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - かげでこそこそと見させて頂いておりました。なんとも言えない大人のもどかしさがまた純愛のようなものが感じられてとても良い作品でした。完結おめでとうございます。 (2020年4月25日 2時) (レス) id: bbf23e1c65 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年3月22日 1時
