35話 ページ36
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カチャ、と扉が開く音で俯いていた顔を上げ、目に入ってきたのは焦ったような鬱先輩の顔。
誰かが来てくれたことにふわりと張り詰めていた心が絆され、ゆるゆると鬱先輩の元へ足を進めれば、先輩はいつかと同じように私の腕を引いてそっと身体を包み込んだ。
「寒いな、ここ……どんだけ1人でおったん？」
「どんだけもいないです」
「じゃ、すぐ俺呼んでくれてんな」
こくりと小さく頷けば、背中に回された腕により力が籠った気がした。
されるがままに鬱先輩に身体を預けていた私も、その背中にそっと腕を回した。
それにピクリと反応した鬱先輩は、「なぁAちゃん」と私の髪に手を滑らせながら言う。
「もうさ……俺んとこおいでや」
「………、それ、は」
「俺やったら絶対泣かせへん。寂しい思いもさせへんで？」
優しく諭すように告げられる言葉に私はさして驚きもせず、ただ黙ってその優しさを頭の中で反芻させていた。
もう、ゾムくんは忘れて、鬱先輩に甘えてしまおうか。
遂にはそんな考えまで頭を過り、どっちつかずな胸の内に嫌気がさした。
こんなに優しくしてくれるのに、こんなに私を好きでいてくれるのに、私は。
「……………私、」
今この瞬間だって、ゾムくんに早く連絡返さないとな、と考えているのだ。
「ええよ、Aちゃんがゾムを好きでも」
「っ、そんなの、！」
「ええねん。それよりもう俺嫌なんよ、Aちゃんがこんなことされとるん」
いくらAちゃんが辛くないって言うても、俺がそんなの見たないねん、と。
どっちつかずの心が揺れ動く。
真っ直ぐな好意に1歩足を進めそうになったのをグイッと手を引いて引き止めたのは。
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「っ、なんしてんねん！大先生！」
「………なんや、もう来てもうたんか」
突如響いた声と、グイッと肩を掴まれてよろめいた私を支えたその腕。
「……どういうつもり？Aに触らんでや」
「はぁ？お前こそどういうつもりなん？」
後ろから回された片腕にぼんやりゾムくんの顔を見ていただけだった私は、鬱先輩から発された言葉に嫌な予感がしてそちらに視線を投げかける。
「なんでAちゃんがここにおったんか分かるんか？」
「先輩っ、やめて、！」
「お前のせいでこないなことになっとんのに、よう今まで黙って見とったな、引くわ」
無情にも鬱先輩から発されたその言葉に、私に回っていた腕はするりと解かれた。
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ぴざる2号(プロフ) - 泣いた…やばい…うわぁぁ…好き…（語彙力皆無） (2021年3月31日 14時) (
レス) id: fa56edbecd (このIDを非表示/違反報告)
ことこ(ドS娘)(プロフ) - あーーーーーーーーーーdi先生ーーーーーーー(震え)って現在なってます。うううううう推しはzmさんなのにううううううこんなに私を惑わすなんて……罪ですねっ！！(オールで小説を読んでた馬鹿野郎より) (2020年8月15日 8時) (レス) id: 0a70119f62 (このIDを非表示/違反報告)
林檎(プロフ) - えぇ、、、無理、、、好きです。もう最高でした！神作品ですね！というかtn落ち多いしzm落ちのこの作品もむっちゃよくてtnzmが最推しな我歓喜 (2020年5月26日 2時) (レス) id: d1841ceef2 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - あと1週間はこのお話のエモさを思い出しては悶えると思います。本当に素敵な作品をありがとうございました。次回作も応援しています！長々とｺﾒﾝﾄ失礼しました。 (2020年3月6日 9時) (レス) id: e6da1803b4 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - 変わっていく気持ちが、さらにutさんと2人は違うということを強調されていて、報われないutさんに心が苦しいです。でも2人がﾊｯﾋﾟｰｴﾝﾄﾞを迎えられて本当によかったです。zmさんはこのお話の主人公でしたが、utさんこそ間違いなくヒーローだったと思います。 (2020年3月6日 9時) (レス) id: e6da1803b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆらら
| 作成日時：2020年2月11日 22時
