「dragon fruit/第一話」 ページ16
「お師さん、みんな…おまたせ。」
「美波、僕に行き先を告げず急に飛び出していくから心配したのだよ?一体何処へ行っていたのだね。ふむ?…それは。」
「おかえり〜A兄ィ♪A兄ィ持ってるのって、俺たちがライブ終わりに食べてるやつにそっくりやん?凄いなぁ〜、わざわざ持ってきてくれたん?A兄ィは優しいなぁ♪」
「うん‥皆で食べたかった。」
僕の持つ皿の上には、いつものフルーツパーラーで出てくるものを参考に切った果物が盛られていた。
ツカツカと寄ってきたお師さんがそれに顔を近づけて、少しの間じっと黙った。
「ほう?…ほうほうほう〜…♪ …トレビアンッ!この飾り切りは君が作ったのかね?美しい、これは至宝なのだよ!ああ、君という造り手によって祝福を受け、輝かしき姿を与えられた幸福なる果実たち!彼らの生は今このとき最高潮を迎えたのだよッ!…君は手先が器用なのだね、素晴らしい技術だッ♪」
お師さんはまるで崇高な芸術品を見るように果物盛りを様々な方向から眺めている。
「あぁ…このままガラスケースに入れて飾っておきたい。しかし美波の気配りを無下にするわけにもいかない。…心惜しいが頂こう、栄養補給にも丁度いいしね。」
お師さんは優雅にソファに座る。僕は彼の前に皿を置いて、紅茶を淹れようと奥に向かった。
「俺も手伝うでA兄ィ!」
「ありがとう、かげくん。」
僕はかげくんを連れて部室の奥に入っていった。
部室でガスを使うわけにはいかないので、ここでは電気ケトルを使用している。スイッチを入れお湯を沸かしている間に茶葉を選ぶ。
少しでも明るい気持ちになってほしいという願いを込めて、柑橘系の茶葉を淹れることにした。
茶葉を選んでいる間にかげくんが出しておいてくれた紅茶セット、そのポットへ茶葉を入れ、あっという間に沸いたお湯を注ぎ蒸らしに入る。
ふわりと漂う華やかでフレッシュな香りと共に、穏やかな時間が流れた。
「A兄ィ、なんや嬉しそうやなぁ♪」
「顔に出てた?…そっか、うん…そうだね、嬉しい。」
僕たちはお互いに顔を見合わせ、クスリと笑った。
「…ノンッ!!!」
「「……………ッ?!」」
和やかに話していると突然お師さんの鋭い叫び声が部室に響き、その声に心臓がびくりと飛び跳ねる。
何事かと驚いた僕たちは、急いで紅茶を持って彼らの様子を見に行った。
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みん。(プロフ) - 朱憑(さぶ)さん» コメント下さりありがとうございます!!好き、何周もしているとのこと、感無量でございます!!!そして御指摘の通り仁兎です!ハチャメチャに誤字しておりました!すぐに修正しました気づいてお教えて下さりありがとうございます!!! (2023年2月21日 0時) (レス) id: febc79156f (このIDを非表示/違反報告)
朱憑(さぶ) - この作品好き過ぎて何周もしています笑 ところでなのですが…なずな君の苗字。二兎ではなく仁兎だと思います…! (2023年2月19日 16時) (レス) @page14 id: 369ab47d46 (このIDを非表示/違反報告)
みん。(プロフ) - おかゆさん» コメント下さりありがとうございます!この作品がおかゆ様の目に止まったこと、そしてページを開いてお読み下さったこと、嬉しい気持ちと感謝で今胸が満たされております!おかゆ様の心にジャストミートできて良かったです!! (2022年12月27日 23時) (レス) id: febc79156f (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ(プロフ) - Valkyrieの作品を探していたらたまたま見つけ読んでみました。雰囲気などがドストライクでした。好きです。これからも更新頑張って下さい。 (2022年12月27日 22時) (レス) id: 4ef80cb4cb (このIDを非表示/違反報告)
みん。(プロフ) - 百華夜さん» ぬわぁー!まさかコメントを戴けるとは思っておりませんでした!!お読みいただきありがとうございます、そして励ましのお言葉心から感謝致します!! (2022年12月27日 16時) (レス) id: febc79156f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みん。 | 作成日時:2022年11月24日 1時