第四章 【冷酷なる竜の召使】 ページ31
人の姿とはいえど、相手からは人の声では再現できなさそうな竜の唸り声がしてくるのを見て、月城は咄嗟に仲介に入る。割り込まれて興が覚めたのか、花坂はそのまま黙り、対するルナディは怒りを抑えない。
「よし、よし。この馬鹿がごめんな、きっとお前のところの主君は寛大な心を持ってると思うぜ。でも人のものを取っちゃいけないだろ?俺たちは大切な宝物を取り返しに来たんだ。何も、喧嘩する為に来たわけじゃない」
「私は元からこのトカゲを倒すことしか考えてなかった」
「夢乃は黙ってろ。
それに、お前のところの主君は結構な有名人なんだろ?だったら有名人らしく行動を弁える事はするはず。それなのに横暴な行動を任せたって事は、それ相応の理由があってなんだろう。俺たちは穏便に、事を荒立てる事なく宝物を返して欲しいだけだ。
アンタの大事な主君を傷つけるなんてしない(と思いたい)。ただ、どうして夢の珠を奪ったのか理由を知りたいんだ。その為には話し合わなくちゃいけない。そうだろ?」
どうやら落ち着きを取り戻したらしく、しかし不満げな表情でこちらを見てくる。すると何を思ったのか、おもむろに立ち上がって地下空間の奥へと歩いていく。先程戦ったばかりで疲弊している筈だが、まるでその様な気配を見せない事に不思議な顔をする。その横で花坂が月城に彼の能力を教えた。
「『どんなものでも強化したり複製する』能力?」
「そう睨んでいるわ。本人の口から聞いたわけじゃないから、どうともいえないけれど」
「それでも、疲れてる筈なのにそんな様子を見せないよな。能力か?」
「それか、竜人族としての基礎的な回復能力でしょうね」
小声で話し込んでいる様子を見、ルナディは急かす様に顎で地下空間の奥を指す。早くしろと言わんばかりの表情に、花坂と月城は駆け足で奥へと進んでいくのであった。
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作者名:ミンミンゼミ31039 | 作成日時:2018年12月8日 22時