みにまむ ２９ ページ30
「二人に迷惑かけちゃったなぁ……けほっ…」
ベッドで身体を横にしている内に、だんだんと朦朧としてきた。
瞼が重くなってきている。
早く寝ちゃった方がいいのかな、と判断したから私は重い瞼に逆らわず目を閉じた。
・・・・・
「A…よかった、寝たんだな」
俺は前より少しだけ大きくなった身長で背伸びをして部屋のドアノブを回す。
寝顔はいつもと変わらず穏やかだが、やはり頬は赤いまんまだ。
熟した林檎みたいに甘くて、蜜がたくさん詰まっているようだ。
「お前は…もう、覚えてないんだろうけどなぁ…」
俺以外に音を発するものが無いせいで空っぽになった部屋。
一人って、こんなに寂しいものだったか？
「昔っから顔は全然変わってねーのがAらしいな。童顔って言ったら怒るだろうけどな」
心の奥底を覗くような感覚で古い記憶を引き出してみる。
口の悪さは幼いころから全く変わっていないし、大きい目もそのまま。
ただ、変わったのは…
「…ん……」
「うおっと……あんまり大声で話すと起きちゃうし…」
Aの記憶はまだまだ目覚めない。
俺だけ知ってるんだ。二人だけの秘密。
耳に口を寄せて、ひそひそ話をするみたいに。
どうして気味の悪いウサギが俺をこの部屋に連れてきたのか、今ではだいぶんと分かり始めた。
「だって、敵の目的は俺の記憶を引き出して、個性を爆発的に強化するため、だもん」
後のことを考えると気が滅入ってしまいそうだ。
だから俺はAの額に置いてあるタオルを換えることにした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 42人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：真裏 | 作成日時：2017年10月9日 8時
