桃ジュース【桃】 (ページ9)

今日:19 hit、昨日:15 hit、合計:328,907 hit

9 ページ9

…

『佐久間さん、前回もですけど素敵なスーツですね』

深い臙脂色のスーツ、採寸もしっかりされているのか袖の長さもピッタリ。

中に着ているシャツもボタンが1つ1つ違うデザインになっていてとてもお洒落。

「ありがとうございます。

これ丁度下ろしたてなんですよね」

『そうなんですね、マメなんですね』

シワだらけのスーツを着て豪遊する人たちもいる中、佐久間さんは随分と気遣いが感じられた。

「んー、まぁよく汚れるんですよねぇ…」

『汚れる…？』

「あっ、まぁなんていうか…よく転ぶんですよね笑」

『転んじゃうんですか！笑

怪我しないように気をつけてくださいね』

「あははっ、ありがとうございます笑」

一瞬戸惑った表情をしたような気もしたが、そこまで深追いはしなかった。

『お仕事はどういったことをされてるんですか？』

「んー、なんて言ったら良いだろうなぁ…」

唸るように考え始めた佐久間さん。

『言いづらいなら全然大丈夫ですよ』

世の中色々な仕事がある。職業をステータスにしている人もいるし、職業で人を判断する人も少なくはない。

この仕事をしている私もそう、それだけを理由に見下されたり卑下されたりもしてきた。

「じゃあ秘密にしておきます。

ミステリアスな方が人って魅力的でしょう？」

佐久間さんはニヤリと笑ってそう言った。

…