桃ジュース【桃】 (ページ10)

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「じゃあそろそろ帰りますね、今日も楽しかったです！」

『こちらこそ、すごく楽しかったです』

またね、と手を振りながら席から離れて行く佐久間さん。

「あっ、お代は入店の時にあの人に渡してあるんでそれで！」

佐久間さんが指差した先には黒服を見に纏ったラウの姿が。

いくら使うかわからない状態で先払いしたんだ、と呆気に取られている間に佐久間さんの姿は見えなくなっていた。

控室に戻るとニヤニヤした顔でラウが近づいてきた。

「お疲れ様、今日は体調余裕ありそうだね」

『うん、お酒ほとんど飲まなかったからね』

アルコール類のグラスはさりげなく自分に寄せ、私にはソフトドリンクを渡してくれた佐久間さん。

乾杯の時はくらいは、と少し飲んだだけだからいつもみたいに気持ち悪くなっていない。

(こんなに気遣ってくれるお客様は初めてだな……)

鏡に映る自分はいつもみたいに疲弊した顔ではなく、自然と口角が上がっていた。

「さて、ここで問題です！

今日は何円を置いていったでしょうか？」

『えー、いくらだろう』

さっきからずっとニヤニヤしているラウ、きっとこの前みたいな突飛な金額なんだろう。

『150とか？』

まさか毎回そんなに払えるわけ無いだろう、と半ば冗談で言ったつもりだった。

「残念！正解は……」

ラウは華奢で大きな手で3を表した。

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