33人目。 ページ35
ピシャリと休憩室の扉を開ける。
そこには……
「誰も……居ない?」
人間であれば気配があるはずなのだが、室内には全くというほどそれを感じない。
三葉にどういうことなのかを聞こうと振り返るが、走ってきたせいで三葉はまだこの場に到着してはいなかった。
「……あの。」
不意に、背後から声がかかる。
透き通るような、いつだったか聞いたことのある声。
慌てて室内を見渡すと、ベッドの上に、
確かにそいつは居た。
水色の瞳に、癖のついた髪。
白いパーカーを着ているようで、上半身は布団とほぼ一体化している。
「…貴方が、家の前で倒れてたの?」
「え、えぇ。多分。」
…黒子テツヤ。
毎度毎度、私になんらかの干渉をしてこようとする人間。
_____私の考え方を、変えようとした人間。
「た、多分って何?」
「いや、僕も倒れてた理由はわかりません。
ただ、Aさんに会わなくちゃいけない用事があったので…」
「私に、用事…?」
ベッドの淵に座り、まじまじと私を見る黒子。
人間である彼が私に何を言いたいのか____全くもって、理解不能だ。
「単刀直入に言います。
影宮Aさん…ですか?」
「……っ!?」
真剣な瞳で私を見据える黒子。
____コイツに苗字を教えた覚えはない。
…ましてや、表札を出しているわけでも、ジンや三葉達が勝手に言うとも考え難い。
半ば慌て始める自分の思考回路に一旦ブレーキをかけ、私は深く深呼吸をしてから黒子を見た。
「なんで、知ってるの…?」
「じゃあやっぱり…!!」
____理解出来ない。
彼の言葉、行動原理、感情表現、
私にはその全てが理解出来そうにない。
…なぜなら、彼は私の名前を確認すると、嬉しそうに笑ったのだ。
そして_______
「改めまして、お久しぶりですAさん。
黒子、テツヤです」
「…くろ、こ…
……っ…」
突然の自己紹介。
わけもわからず聞いていた私だが、名前を聞いた途端、急に頭に割れるような感覚が走る。
痛い、いたい、イタイ。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…」
その痛みは引くことを知らず、頭に居座り続け、激しく『黒子テツヤ』という名前を残らせた。
「A、さん…?」
頭を抱えて座り込む私に、黒子も動揺してこちらへと向かってくる。
そして、最後に頭に過ぎったものは____
バスケットボールを持った水色の、
小さな少年の姿だった。
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黒ウサギ - ハーイ(*´▽`*)楽しみにしていますねっ☆ (2014年11月1日 22時) (レス) id: 630c907ecf (このIDを非表示/違反報告)
みなみな(プロフ) - 黒ウサギさん» ありがとうございます(´∀`*)是非是非、これからもよろしくお願いします(`・ω・´)キリッ (2014年11月1日 1時) (レス) id: 0af48c629f (このIDを非表示/違反報告)
黒ウサギ - お話いつも読ませて貰ってます(^○^)続きが気になって仕方がありません;^)更新楽しみにしています(≧∇≦*) (2014年11月1日 0時) (レス) id: 630c907ecf (このIDを非表示/違反報告)
みなみな(プロフ) - 心縷々さん» えーと…私は心縷々さんの作品を読んだことが無いのでアドバイスというより、自分が気をつけていることを言いますけど…一先ず、私は裏設定を大量に作っていたりしますね。物語の中では語られることの無い物語…そういうものが人を惹きつける魅力だと思うのです (2014年9月2日 17時) (レス) id: 0af48c629f (このIDを非表示/違反報告)
心縷々(プロフ) - あの、お願いがあります。私はホラーを書いているのですが、この小説は私の書けないなんか難しい展開が上手いと思いまして…。厚かましいのですが、アドバイスとかもらえませんか?お願いします!作者名はこのままなので…。 (2014年9月2日 16時) (レス) id: 2c93f684a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みなみな | 作成日時:2014年8月31日 18時