#opposite【菊地原士郎】

#2 ページ2

**





《菊地原まじうぜー》



《盗み聞きが得意なんだろww》



《気持ち悪っ》



自分の悪口を聞くのはもう慣れた。



でも思わず耳を塞ぎたくなる時だってあった。



こっちの身にもなれと、文句を言いに行こうかと思った時もあった。



でも諦めた。



一生向き合わなければいけない物だと悟ったから。



この能力があってよかったなんて思った事なんてない。



寧ろ無い方がよかった。



余計な声まで僕の耳に入ってくるこの感覚が大嫌いだった。



そして僕は人の汚い部分を知っていく。



それがとても不快で仕方なかった。



僕は、色んな事を知りすぎた。



それがとても悲しくて仕方なかった。



自分がひねくれていくのが分かった。



そして皆僕から遠ざかっていく。



・・・でもひとり、僕のそばにいた人がいた。



あれは小さい頃だった。



《・・・・・・》



彼女はいつも黙っていた。



《・・・君は僕が気持ち悪くないの？》



《・・・・・・》



《・・・変なの》



そういえば、彼女は今どうしてるんだろうか。





**

#3→←#1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す