【伏黒甚爾】術師殺しに5億で買われました。

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夏油くんたちと合流して天元様の元へ急ぐ私たちは今、最下層へ降りる為のエレベーターに乗っている。


「A、何かあの男の有益な情報は視えたかい？」


そして最下層へと降りる間、夏油くんは情報収集に有利な術式を持つ私に突如現れたあの男について尋ねた。


『…それが何も分からないんです。アイツの情報を視ようと思うとモヤがかかったみたいな感覚に襲われる。こんなの初めてで…私もどうしたらいいか…。本当に役に立てなくてごめんなさい。』

「そんなことが……。まあとにかく、あんまり自分を責めすぎない事だよ。」

「そうじゃそうじゃ！Aは笑っていた方が可愛いぞ！」


頭を下げる私に優しい声をかけてくれる二人。天内さんにまで気を使わせちゃって本当にダメだな、私。…しっかりしなくっちゃ。


…でも。この異常すぎるくらいに全身に巡る不安の正体はなんなのだろう。

術式が使えないこと？いや違う。相手の得体がしれないこと？いや少し違う。…私は決定的な何かを見落としている。それが何かは分からない。

くそ…こんなにも術式無しじゃ頭が回らないだなんて。術式に頼りすぎていた自分の怠惰さが嫌になる。


私が漠然とした不安を抱えたまま、遂にエレベーターは最下層へと着いた。

そして黒井さんとはここでお別れだ。
私たちは黒井さんに背を向けて本殿を目指す。

その最中も私は思考をめぐらす。五条くんの今の状況について術式を使って視ることも出来るが、ここで術式を使って残穢を残してしまうのはナンセンスだ。

それを辿ってあの男が来たら────いや、待てよ。あの得体の知れない男は五条くんや私たちの警戒が高専の結界内に入ればとけると知っていた人物。

そしてあの男は“あの”五条くんが残って戦闘すると言った時も、私たちが理子ちゃんを連れて先に行った時も、何ひとつとして動揺をしていなかった。

つまり、あの男は五条くんを殺し、その後に私たちを追いかけて理子ちゃんを殺せるという算段が、何らかの保証が、自信があったわけだ。

そんな男なら私たちが残穢を何一つ残さないという手に出ることくらい易々と予想が着くのではないか。

＿＿＿＿もし仮に、だ。
私たちが残穢を残さないことを踏まえた上でも、私たちを追いかける算段があったとしたら？

全身に巡る不安の正体がやっと理解できた気がする。


『…ごめんなさい！！ちょっと戻ります！！！』
「ちょ、A！？」


そして私は黒井さんの元へ駆け出した。


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