【伏黒甚爾】術師殺しに5億で買われました。

１． ページ1

・



『…よし分かりました。
じゃあ、私を5億円で貴方に売ります。それで貴方はこの天内さん殺しの仕事から降りる。そうすれば全て解決ですね。』

「…は？？？？？？」



・



遡ること少し前─────


午前11時を過ぎて天内さんに懸かっていた懸賞金が取り下げられ、今は午後3時。ついに私たちは高専の結界内に到着した。

これでもう安心だ、そう誰もが安堵の息をつき、五条くんも…“私も”術式を解いた。


刹那、五条くんの身体を何かが貫いた。


『は、』と思わず情けない声が漏れる。

混乱して思考がまとまらない。そんな中五条くんの胸からどくどくと鮮血が流れるのを見て、五条くんは刀に貫かれたのだとやっとのことで理解した。

そしてその刀を…それを握る手を、肩を、と順々に視線で辿りその持ち主の方へ目を向ける。

そこに居たのは＿＿＿黒髪で口元に傷そそあるものの端正な容姿を持つ屈強な男だった。

それにしても何故部外者が…？ここは高専の結界内だというのに…！！

私は急いで“術式”を使って、目の前の男の素性、目的、なぜ結界内に入れたか、などを視た。

だがしかし、この男について何ひとつとして知ることは出来なかった。

この男について知ろうと思って術式を使って視ると、まるでモヤがかかったみたいに全てが霞んで情報を読み取ることが出来なかったのだ。…こんなのは17年生きてきて初めてだ。

生理的に出た冷や汗がツーっとだらしなく背筋をなぞる。ぐるぐると不安が渦巻いて全身を巡る。


「…い！おい！A！！何ボサっとしてんだ！さっさとお前も傑と一緒に天内を連れてけ！！！」

『…あ、は、はい！』


五条くんに名前を呼ばれてやっとハッとした私は、少し先に行っていた夏油くんたちを追いかけるために駆け出した。

…大丈夫。五条くんなら大丈夫。拭いきれない不安を心の奥底に押し込んだ。

＿＿＿＿今思えばこの判断が間違いだったのだろうけど。


・

２．→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す