Jesus!! ページ47
学校の帰り、駅のロータリーで初老の男性に声をかけられた。
翼と忍、私は三人そろって振り返る。
「話があるんだが、いいかな?」
気弱そうなおじさんは、小さな声でおずおずと話す。
「なんでしょう?」
翼が答えると、道の端へと私達を誘導した。
『知り合い?』『知らない。』
ほぼ声には出さず、目と目で会話する。
「突然なんだが、これを受け取ってもらえないかな?」
私達の前に差し出された紙袋。
えっ!? なんでそんな物……
三人とも目を丸くする。
それはこの辺り一帯でよく見かける葬儀屋の香典返しの袋だった。
翼の顔を見ると、眉間にしわを寄せマスクを顎までずらした。
大きく鼻で空気を吸うと、私に耳打ちする。
『あれ、香典返しじゃない。中身はチョコレートだ。』
私は驚きながらも忍の耳に伝える。
忍も片眉を吊り上げ、信じられない顔をしている。
私達の思考はたぶん同じ。
なぜその紙袋!?
そう、今日はバレンタイン。
バレンタインのチョコレートを入れるなら、もっとそれらしい袋に入れて渡すでしょ?
それにおじさん、一体誰に渡したいの!?
「私はね、タクシーの運転手をしているんだが、このロータリーで乗客を待っている時、君をよく見かけるんだ。それで……私は決めたんだ。ぜひ君にうちの息子の嫁になって欲しい。と。」
おじさんの目は真剣で、力強い光を宿す。
「うちの息子はいい子なんだが、なかなか結婚しようとしない。アイドルばかり追っかけてないで君みたいに身近で綺麗な子に目を向けて欲しいんだ。」
眼光を向けた相手は、もちろん私では無い。
おじさんに見初められたのは、またしても忍。
忍は血の気が引いたのか、顎を上げ空を見ている。
私と翼は込み上げる笑いを必死で隠す。
根本的にいろいろ間違っているけど、おじさんは気の毒なくらい真剣。
でも、だから、ちゃんと教えてあげないと……
「すみません、この子、男の子なんです。」
「冗談を言ってはいけないよ。スカート履いているじゃないか。断るなら、もっと素直に断ったらどうだ。」
気を悪くしたおじさんは私を睨む。
忍はため息をつくと胸ポケットから生徒手帳を出した。
「彼女が言っている事は本当です。俺、男なんです。」
生徒手帳を見たおじさんは固まったまま無言。
「すみません、失礼します。」
動かないおじさんに私達は頭を下げ、その場を後にする。
「忍……ズボン……履こ。」
「アーヤに一票。」
「………考えとく………」
終
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千祥(プロフ) - nana 名無し82170号さん» 楽しんでいただけたなら、とても嬉しいです。読んでいただき、感謝!です。ありがとうございました! (2018年11月11日 23時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
nana 名無し82170号(プロフ) - 面白すぎ!!見てる時ずっと爆笑してた (2018年11月10日 11時) (レス) id: 2b0f8564ed (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 大河さん» 忍のスカート丈は膝上or膝下orロングどれでしょうね…私はロングであって欲しいと切に願っております(^_^;) (2017年12月14日 22時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
大河 - 忍うう〜!スカートやめてくれ!まぎらわしいぞ!! (2017年12月13日 21時) (レス) id: bba2598702 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 恋檬さん» ありがとうございます(^^) (2017年12月3日 0時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
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