ページ ページ37
「まずはゆっくりでいいから七七八。」
千さんの顔を見ないよう、そして見られないよう俯き加減に拇指だけを動かした。
「うん、そう。じゃあ、この一行弾くよ。」
千さんは自分の大腿を二回叩き、続けて私は弾き始めた。
さくら〜さくら〜
七七八…七七八…
たどたどしく弾く私の音に合わせ、歌詞を乗せる。
わっ……弾けた……
とても嬉しくて、真横にある顔に満面の笑みを向ける。
「ね、弾けるでしょ？ 俺はこの入り易さは箏の魅力の一つだと思うんだ。そして奥が深いところもね。」
千さん……良い顔してる……
公演、面倒くさいとか言ってたけど、箏は好きなんだね。
気づいて無いと思うけど今、穏やかで優しい顔してるよ。
「いい感じのとこ、悪いんだけど……彩ちゃん、お迎えが来てるよ。」
入り口の方から声をかけられ振り返ると、壱さんと……上杉君！？
上杉君、どうしてここが分かったの？
戸惑う私を他所に、上杉君は一直線に千さんの傍に来た。
無表情に顔を覗き込み凝視する。
「な、なんだよ！」
戸惑う千さんにフッと笑みを浮かべたかと思うと、厳しい表情で私に向き直った。
「帰るぞ、立花。」
尖った物言いに、たじろいでしまう。
……怒ってる？……
きっと、昨日の約束守らなかったからだ……
でも、仕方無いじゃない。生徒さん、お休みだったし……それに千さんが箏を教えてくれる。って言ったし……
「壱、誰なんだ、こいつ。」
千さんも上杉君の態度に少し腹が立ったみたい。
「彩ちゃんと同じ塾の子。」
「ふ〜ん……その塾仲間が彩ちゃんを連れて帰る権利ってあるの？」
目を細め、挑発的に片口角を上げる。
千さん、止めて……火に油を注いじゃダメだよ……
入り口に置いていた私の鞄を手に、部屋から出ようとしていた上杉君は振り返り、双子に宣言。
「明日、改めて立花と来ます。明日以降はもう立花がこの家に来る事は無いでしょう。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 41人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千祥(プロフ) - nana 名無し82170号さん» 楽しんでいただけたなら、とても嬉しいです。読んでいただき、感謝！です。ありがとうございました！ (2018年11月11日 23時) (
レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
nana 名無し82170号(プロフ) - 面白すぎ!!見てる時ずっと爆笑してた (2018年11月10日 11時) (レス) id: 2b0f8564ed (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 大河さん» 忍のスカート丈は膝上or膝下orロングどれでしょうね…私はロングであって欲しいと切に願っております(^_^;) (2017年12月14日 22時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
大河 - 忍うう〜！スカートやめてくれ！まぎらわしいぞ！！ (2017年12月13日 21時) (レス) id: bba2598702 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 恋檬さん» ありがとうございます(^^) (2017年12月3日 0時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
