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「今日は生徒さんはいないんですか?」
「うん。熱が出て休み。」
差し出された座布団に座ろうとすると、「待って!」と止められる。

「今日は特別授業。」
え?
「せっかくだから、彩ちゃん弾いてみない?」
わ、私?
「座布団そっちに置いて。」
千さんの向かいにある箏を指される。

「無理です。私、したこと無いですから。」
断るもニッコリ笑う。
「大丈夫。箏の良いところはバイオリンとかと違って、初めてでも必ず音が出せるとこ。」
それは……そうかもしれないけど……でも……

「さ、さ、時間もあまり無いんだから早く座って。」
強引に座布団を持たされ背中を押される。
箏の前に座ると、爪を差し出された。

「まずは挨拶から。よろしくお願いします。」
正座の膝と膝を付き合わせ頭を下げる。

「爪を付ける時、指の腹を少し舐めて付けてね。爪が指に密着して弾いている途中で取れないから。」
そうだったんだ……指サックみたいにゴムでできている訳でも無いのに、どうして取れないのか不思議だったんだ。
私は指先を少し舐めてそれぞれの指に付けた。

「体は斜めに座って。……じゃあ、音を出していくよ。」
桐でできた譜面台に楽譜を置く。
楽譜と言っても、箏の楽譜って全て漢字で縦書きなんだ。

「うちは13弦の箏しか教えてないんだ。体から遠い弦、低い音から一〜十、斗(と)為(い)巾(きん)。手前から拇指で鳴らせてみて。」
言われた通り、拇指で順に弾いてみる。
本当だ……簡単に音が出る。
ちょっと嬉しくて振り返ると、予想外にも千さんの顔が近くて驚いた。
慌てて箏へと向き直る。

「この弦が七の音。今から弾く『さくら さくら』はこの音から始まるからね。」
千さんは赤いテープを小さく切って印をつけてくれた。
そして、「よく見ててね。」と言って長い腕を伸ばし、覆い被さるようにゆっくり弾きはじめた。

七七八 七七八 七八九八 七八七六……

耳元で囁かれる楽譜一言一言に軽く息がかかる。

う〜……くすぐったい……
千さんも壱さんも、近すぎる……恥ずかしいんだよ。
だって今までKZのメンバー以外でこんなに近くに男の人の顔があったこと無い。
胸はドキドキするし、顔はだんだん熱くなってくるから、耳まで赤くなってるんじゃないか?って心配してしまう。

『二人きりになるなよ。』

上杉君の言葉が脳裏を過る。

危険って……こういう事だったの?……

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千祥(プロフ) - nana 名無し82170号さん» 楽しんでいただけたなら、とても嬉しいです。読んでいただき、感謝!です。ありがとうございました! (2018年11月11日 23時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
nana 名無し82170号(プロフ) - 面白すぎ!!見てる時ずっと爆笑してた (2018年11月10日 11時) (レス) id: 2b0f8564ed (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 大河さん» 忍のスカート丈は膝上or膝下orロングどれでしょうね…私はロングであって欲しいと切に願っております(^_^;) (2017年12月14日 22時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)
大河 - 忍うう〜!スカートやめてくれ!まぎらわしいぞ!! (2017年12月13日 21時) (レス) id: bba2598702 (このIDを非表示/違反報告)
千祥(プロフ) - 恋檬さん» ありがとうございます(^^) (2017年12月3日 0時) (レス) id: b78f8b2173 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千祥 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年10月28日 0時

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