晩酌 ページ2
___夜。
3度のノックの後自室の扉を空けると、そこに立っていた訪問客はハンジさんだった。
ハンジさんは笑みと共に燭台を持っているもう片方の手を掲げて見せる。その手には燭台の灯りに鈍く照らされる、黄金色の瓶。
ハンジ「久しぶりにふたりでどうだい?これ、中々の貴重な酒なんだけど」
お酒の飲める年齢になってから、ハンジさんと2人でお酒を嗜む事は少なくなかった。
「明日も早いから、少しだけですよ?」
おどけたように言えば、ハンジさんも「分かってるよ」とじゃれるように言った。
部屋にあるグラスを2つ並べると、ハンジさんがその中に液体を注いでいく。美しく波面を打つその液体を口に運ぶと、アルコールの熱の余韻のようなものが身体に回っていくのを感じた。
「珍しいですねハンジさん。今日の研究はもう終わったんですか?」
ハンジ「さすがに机に向かいすぎて肩が凝ってしまってね。___というのは建前で。本当は久しぶりにAと話したかったんだよ」
「…私と?」
きょとんとする私に、ハンジさんは苦笑いをしてグラスを置いた。両手で頬杖をつくハンジさんの真実を見通すような瞳と目が合う。
リヴァイさんとはまた違うけれど、この瞳も合うと逃げられないような、不思議な力を持ってる。
思わず背筋をのばすと、ハンジさんはふっと空気を緩めて「あぁ、そんな肩に力を入れないでくれ」と笑った。
ハンジ「Aはさ、…恋愛とかしたことある?」
そのまさかの問いに、「え?」と呆けた声が出た。
「もしかしてハンジさん、恋愛相談ですか?」
ハンジ「いや、私じゃなくて…」
ハンジさんは呆れたように笑い、目線で先を促したので私は過去を思い返すように右上を見て考える。
「恋愛…もちろん牢屋に入ってから今までは無いですし、貴族だった時も…シーナの人達は大抵自分の意思では結婚とか出来ないので、するだけ無駄だと思って好きな人とかも特にいなかったですね」
ハンジ「…そっか」
「どうしてそんなことを聞くんですか?」
ハンジ「いいや、単純な疑問さ」
ハンジさんはもうそれ以上は聞いてこなかった。
その質問がどんな意味を持つものだったのか、私には分からなかったけれど、何か私のことを”気遣う”
気持ちだということは、長い付き合いから何となく分かった。
「ハンジさん、着きましたよー」
すっかり酔ってしまったハンジさんを部屋に運び、しっかりベッドに寝かせて、廊下に出る。
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むささび(プロフ) - 一気に読み進めてしまいました。とても面白かったです。番外編ではなく、是非続編として本編のストーリーで夢主ちゃんが活躍&キャラと絡むのか拝見したいです!一先ずはお疲れ様でした!また拝見出来る日を楽しみにしております。 (6月26日 17時) (レス) @page35 id: 2279a97b0b (このIDを非表示/違反報告)
みみみみみ(プロフ) - フォールさん» ありがとうございます!完結まで見届けてくださり嬉しいです🙇♀️これからもがんばります、、!! (2023年3月16日 16時) (レス) id: d7f9a920c5 (このIDを非表示/違反報告)
みみみみみ(プロフ) - ゆるさん» コメントありがとうございます!とても光栄です🙇♀️これからも頑張ります!😭 (2023年3月16日 16時) (レス) id: d7f9a920c5 (このIDを非表示/違反報告)
みみみみみ(プロフ) - らなさん» ありがとうございます…!とても嬉しいです😭これからも頑張ります💪 (2023年3月16日 16時) (レス) id: d7f9a920c5 (このIDを非表示/違反報告)
フォール(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!素晴らしい作品だったので無事完結したことを嬉しく思います!!すっっごい面白く、素敵な作品で、あっという間に最後まで読んでしまいました!これからも頑張ってください!!! (2023年3月15日 23時) (レス) @page35 id: eb505c02be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みみみみみ | 作成日時:2022年10月22日 22時