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#144 ページ32

澄空から事情を聞いた私は、ジメジメとした道場の1角にやってきた。


「ゴリオくーん?」

いじいじと隅で『の』の字を床に量産している。まったく、面倒なゴリラだ。

「……馬鹿だねぇ、君も私の弟分にもうなっているも同然じゃんか。君から言い出したんだよ、『姉御』ってさ」

「……」

「ほら、わかったらそんな事しないで打ち合いしよーよ。君がぶっ倒れるまで相手してあげる」


「姉御ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「はいはい。いくよ、ゴリラくん」

「え、姉御、今ゴリラっていいませんでした!!? ねぇ!!」

「いやだな気の所為だよ。ゴリオくん」

「姉御、それ棒読みですよね!!? ちょっとぉ!?」

本当、手のかかる可愛いゴリラだ。

**


剣術と剣道は違う。
いくら現世では腕がたっても、ルールの中で成立する剣道というスポーツだ。対して剣術は何でもありだ、足を出そうが、何処を狙おうが。

ここで打ち合いしていくうちに、自分の中に嫌でも剣術の動きが入ってくるのだ。色々な(すべ)を知って、有効な技術は既に反射となりつつある私はもう、“剣道”には戻れないかもしれない。


最初はそりゃあ、悩んだよ。

“私が構築してきた完成された剣道を捨てていいものか”

ってね。現世に置いてきたあの後輩が脳裏に浮かんで、その度に悩んだ。

私が剣道を貫くことが、約束を守れず消えた事への罪滅ぼしだと。それが何処かであの子と繋がっていられる、最後の繋がりだと思っていたから。思いたかったから。

でも。
それでも、この世界で守りたいもの守るには。
この世界で、私の家訓(しんねん)を貫くには。剣道では足りないのだ。

私は剣道を捨てるんじゃない。

私の積み上げた剣道に、剣術の動きも積み上げるんだ。

後輩、君を捨てるわけじゃないよ。
やっと、君の他にも守りたい人が出来たんだ。
ごめんね。


許して欲しい。


「勝負あり!!」

その代わり。
昔交わしたもう1つの約束は守り続けよう。

「勝者、間宮A」


私は、君以外の誰にも負けない。
君が私に勝つその日まで。


**

「月狐神様、いらっしゃいますでしょうか!!」

ゴリオくんと幾度も打ち合い、疲れ大の字に寝そべっていると。
慌てた様子で村長さんがやってきた。

「どうしました?村長さん。そんなに慌てて……畑に何かありましたか?」

「いえ……畑や作物はなんともありません。がその…6日後の収穫祭ですが、領主様がお見えになるそうです」

「……マジか」

魔王戦フラグ回収、か。

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imperatoris - 100票目頂きました! あざっす! (2018年8月6日 0時) (レス) id: 9caab1c44f (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 冬乃さん» コメントありがとう。お待たせ致しました。続編が完成致しましたので、其の伍にてお待ちしております。今後とも是非御贔屓くださいませ。 (2018年1月4日 19時) (レス) id: 845d9be9cf (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 幸さん» コメントありがとうございます。お待たせ致しました。続編が完成致しましたので、続編にてお待ちしております。今後とも御贔屓に。 (2018年1月4日 19時) (レス) id: 845d9be9cf (このIDを非表示/違反報告)
冬乃(プロフ) - 続き待ってます! (2017年12月27日 22時) (レス) id: cdd9e80849 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続き楽しみにしてます (2017年12月7日 12時) (レス) id: 8ce45858db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまめ | 作成日時:2016年7月9日 19時

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