#137 ページ25
充瑠が戻って来たのは2人の着物の会計が終わって間もなくの頃だった。
「文句は聞かねぇ、気に入らねぇなら大人しくてめぇで選んで来てくだせェ」
そう目をそらしながら、私に山吹よりの橙色を突き出した。帯は黄色。
かかった時間は四半刻ほど。その間ずっと選んでくれていたんだから、言葉とは裏腹にいっぱい悩んでくれたんだろうなぁ。そう思うと口元が緩んでく。
「ありがとう、充瑠。可愛い、気に入ったよ」
私は嬉しさを噛み締めるように、暖かな橙色を抱きしめた。
「そうかィ、そいつァ良かった」
充瑠も照れくさそうに笑って、それからさっさと買ってこい。と追い払われたので、大人しく店番のお婆さんに会計をお願いした。
《嬉しそうですねぇ、A》
うん、嬉しいよ。
《この世界での初めての友人だという意味では、貴女にとっても充瑠はそうなのでしょう》
さっすがぁ。お見通しだったか。
私は充瑠が大好きだ。願わくばこのまま親友路線一直線したい。
「お買い上げありがとうございます。お狐様、あの人のいい村を化かすのも大概になさりますよう」
……おっ?
もしや、この反応はっ……私を神様だと信じてない!!なんてまともな反応!!
久しぶりにちゃんと疑ってくれる人と出会えた事に感動。
「はい、頂いた信仰には相応のお返しをします。作物の神とされる以上、あの村でひもじい思いは絶対にさせません」
私は死ぬまでこの村を飢えから守る。これくらいしか私にできる(というかやっても大丈夫そうな)恩返しが思いつかなくて。
「そうでございますか、失礼いたしました」
「いえいえ、とんでもないで……ん?」
そう言って目を細めるお婆さん。これはまだ怪しんでいるね。それはさておき、私は屑籠の中には綺麗な布の切れ端に目がいった。
「店主さん、こちらの屑籠の中身は捨ててしまうのですか？」
「え、えぇ。そうですねぇ。こんな幅1寸程の布切れじゃぁねぇ……もったいないけれど」
これだけあればつまみ細工が出来そうだよねぇ。そうだ!!
「でしたら、私に売ってくださいませんか？」
＊＊
夜はチーズを贅沢に使ったとクリームシチューグラタン。村人の皆様には内緒のご馳走シリーズだ。
花桜ちゃんはつい三日前、城から迎えが来て唐突に帰ってしまったらしい。年末休暇は無くなってしまったとの事。招こうと思っていたのに残念。
花桜ちゃんに甘酸っぱい思いを抱いている透瑠は、もっと寂しかっただろう。
この日は少し遅くまで騒いだ。
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imperatoris - 100票目頂きました！ あざっす！ (2018年8月6日 0時) (
レス) id: 9caab1c44f (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 冬乃さん» コメントありがとう。お待たせ致しました。続編が完成致しましたので、其の伍にてお待ちしております。今後とも是非御贔屓くださいませ。 (2018年1月4日 19時) (レス) id: 845d9be9cf (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 幸さん» コメントありがとうございます。お待たせ致しました。続編が完成致しましたので、続編にてお待ちしております。今後とも御贔屓に。 (2018年1月4日 19時) (レス) id: 845d9be9cf (このIDを非表示/違反報告)
冬乃(プロフ) - 続き待ってます！ (2017年12月27日 22時) (レス) id: cdd9e80849 (このIDを非表示/違反報告)
幸(プロフ) - 続き楽しみにしてます (2017年12月7日 12時) (レス) id: 8ce45858db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひよこまめ | 作成日時：2016年7月9日 19時
