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#130 狼青年03 ページ17

「ナガレっ目が覚めたか!あぁ、よかった……よかった……!」


俺が目を覚ますと、エリカが泣きそうな声音であの人の名を呼び、ぎゅむっと俺を抱きしめた。
あまりに感極まった様子に、騙され殺されかけた筈なのに自分が戻ってきたことを申し訳なく思う。
だが、殺されかけたのは事実だ。エリカの気持ちもわからなくはないし、現に俺はちゃんと生きているから恨みはしないが、これくらいの意地悪返しは許されるだろう。


「悪いな、エリカ。
残念ながら俺はナガレさんじゃねぇよ。お前が殺そうとした人間だ」

「へ……」

ぎゅうと力強く抱きしめられていた力が抜けていく。それから呆然と、エリカは信じられないものを見るよな目で俺の顔を見つめた。

「そんな、嘘だ……あいつは、ナガレは、魂の理(いのちのことわり)へ還ることを願ったというのか」


絶望にエリカの瞳が濁り、揺れた。

「私を1人置いて逝くことを選んだというのか……そんな筈はっ!人間、貴様何をした!!」


揺れに揺れていたエリカの二つ目が俺を睨む。瞬間、身体が固まり瞬きひとつ出来なくなった。辛うじて動いているのは心臓と呼吸器のみ。

彼女の剣幕に腹の下の方がヒヤリと冷える。

落ち着けエリカ
「ただの人間風情だった俺が神獣様の魂に勝てると思うかっ」


再び死にそうになり、慌てて必死に声を絞り出し叫んだ。途端に体の自由が戻り、腰が抜けて俺は膝を付いた。ひゅーひゅーという呼吸の音が情けない。これから煽るつもりだったのに、煽る前にこの様だ。天使様の力をナメ過ぎた。危うく死に急ぐところだった。

呼吸を整えながらエリカの様子を見ると金の瞳がポロポロと涙を零していた。視点が定まっているのを見るに正気には戻ったようだ。


「何故っ、何故っ……!お前と共にありたいと、再会を願っていたのは私だけだったのか。私がしてきたことは全て無意味だったのか。そんなの、あまりに滑稽じゃないか」


力なくへたりこみ涙を流す姿は、何百年も生きているとは思えない、見た目相応の少女のようだ。

罪悪感がチクチクと俺の心を刺した。


「あー、エリカ。その事なんだけどさ、ナガレさんから伝言。『愛してる。我とお前は共にある運命、輪廻の果てでまた会おう』だとさ。意味、わかるか?」


気まずさに目を逸らしながら伝え、言い終えて様子を伺うと彼女は泣いたまま真っ赤になっていた。

「〜っ馬鹿者め」

嬉しそうに泣きながら怒るその姿は、誰が見てもただの照れ隠しだった。

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imperatoris - 100票目頂きました! あざっす! (2018年8月6日 0時) (レス) id: 9caab1c44f (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 冬乃さん» コメントありがとう。お待たせ致しました。続編が完成致しましたので、其の伍にてお待ちしております。今後とも是非御贔屓くださいませ。 (2018年1月4日 19時) (レス) id: 845d9be9cf (このIDを非表示/違反報告)
ひよこまめ(プロフ) - 幸さん» コメントありがとうございます。お待たせ致しました。続編が完成致しましたので、続編にてお待ちしております。今後とも御贔屓に。 (2018年1月4日 19時) (レス) id: 845d9be9cf (このIDを非表示/違反報告)
冬乃(プロフ) - 続き待ってます! (2017年12月27日 22時) (レス) id: cdd9e80849 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続き楽しみにしてます (2017年12月7日 12時) (レス) id: 8ce45858db (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひよこまめ | 作成日時:2016年7月9日 19時

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