すれ違い ページ42
「…眠れなかった」
はぁ、とため息をつき、爽やかな朝の日差しを浴びる。私にとっては全く爽やかなんかではないが。
何とか立ち上がって伸びをした私は、やるべき事に着手するため顔を洗って部屋を出る。会議、書類、掃除。何かをやっている時はきっと、考え事も放棄できるはずだ。
と、そう思ったのだが___。
一向に、昨日の出来事での胸のモヤモヤが取れない。
「…書類です」
特に、この上司の顔を見ると。
何故か逃げたいほど、後ろめたくなってしまう。
リヴァイ「…おい、」
「…何でしょうか」
リヴァイ「まずはその気持ちの悪い作り笑いを止めろ。お前はいつでもどこでも笑うような質じゃねぇだろうが」
溜め息混じりに言われたその言葉に図星を突かれた私の心臓がどくんと嫌な音を立てた。
リヴァイ「おまけにその隈…昨日、その幼馴染みとやらと会ってから様子が変なことくらい分かる。
それで、1日待ってやったというのにお前は何も喋らねぇつもりか」
リヴァイさんは、言ったらどんな言葉を吐くのだろう。断りきれなかった事に怒るだろうか。それともそのくらいの事で悩むなと叱られるだろうか。
リヴァイ「上に立つ人間がそんな調子じゃ、部下の統率も任せられねぇ。胸ん中にクソだまりがあるんなら早く話せ」
どくんどくんと嫌な音を立てる心臓の音が、段々と大きくなっていく。
「ヴィド…再会した幼馴染みに、
___プロポーズを受けました。
兵団にお金を払って私を買い取る、だから一緒に、シーナで暮らさないかと…返事を3日後に、ここに聞きに来るとも、言われました」
目をぎゅっと痛いほど瞑る。何て言われるかが怖い。今すぐ逃げ出してしまいたい。
少しの沈黙の後、リヴァイさんが口を開く。
リヴァイ「…迷う必要なんて、ないんじゃないのか」
「…もちろん私は、これからも兵士として生きていきたいとヴィドに唱えましたが、」
リヴァイ「…違ぇよ、…お前は元々シーナの人間だろうが」
リヴァイさんの言葉の意味を完全に理解するまで、数分要した。否、理解したくなかったのかもしれない。
ヴィドからあの提案をされた時なんて比じゃないくらい、目の前が真っ暗になっていく。
「シーナに、戻った方がいいと言いたいんですか」
リヴァイ「…5年前、お前は選択肢を持っているように見えて持っていなかった。…地下街の牢屋で自由を制限されていたお前には、そこから解き放たれるためには調査兵団に入るしかなかった」
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作者名:みみみみみ | 作成日時:2022年9月29日 19時