約束 ページ26
壁外調査から帰って、3日程が経過した。
あれからのことは、よく覚えていない。どうやって壁内にまで帰ってきたんだっけ。確か怪我をしていたから、荷馬車の上で運ばれた気がする。
私は3日間、部屋に閉じ籠ったままだった。
リヴァイさんやハンジさん、エルヴィンさんまでもが私なんかを心配して何度もノックをしに来てくれたけれど、応答はしなかった。
ただ__ボタンを見つめていた。
コットさんは綺麗さっぱり食べられており何も残っていなかったが、デノンさんは無惨に、齧られたままその場に置かれていた。
かろうじて残っていた兵団のマントの留め具のボタンを貰ってきたのだ。
ただこうしていても仕方がないことは分かってる。デノンさんもきっとこんなんじゃ怒る。気持ちを切り替えて、次の壁外に向けて訓練をしないと。
デノンさんのボタンをぎゅっと手で握りしめた時、扉が3回、ノックされた。
リヴァイ「_俺だ」
静かに響いたリヴァイさんの声。
そろそろ無視するのには限界がある。そう思って扉を開けると、疲れた表情のリヴァイさんと目が合った。
そうだ、壁外の後は報告書等に駆られると前に聞いた事がある。忙しい中、毎日何度も私の部屋まで足を運んでくれていた事に気がつき、胸が痛む。
リヴァイ「…着いてきてくれ」
そう言われて、リヴァイさんの後を歩く。私の怪我を気遣ってか、歩幅がいつもよりも小さかった。
ついていった先、扉をくぐると屋上に出た。
「屋上…?」
不思議に思って隣を見ると、リヴァイさんは夜空の星を見上げながら後悔や苦しさが混じったような表情を浮かべていた。
リヴァイ「…懐かしいな」
ふっと、張り詰めていた空気を解いたリヴァイさんは屋上の縁に座る。私もそれに倣って隣に座った。
リヴァイ「_怪我はもう治ったか」
そう問われ、怪我の跡に手を這わせる。
「だいぶいい調子です。
…ハンジさんのおかげですね」
壁外からの帰り道はあまり覚えていないが、ハンジさんが私の怪我の治療をつきっきりでしてくれていた事だけは覚えていた。
リヴァイ「…そうか」
宵闇の中、沈黙が訪れる。
「お忙しい中、…気を遣ってくださったんですよね。ありがとうございます」
何となく居心地が悪い沈黙の気がして、言葉を発した。
リヴァイ「あぁ_ようやく全ての手続きが整った」
「手続き、ですか?」
リヴァイさんは夜でも強い光を宿した瞳で、真っ直ぐに私を見つめた。
リヴァイ「お前を_兵士長補佐にする手続きだ」
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作者名:みみみみみ | 作成日時:2022年9月29日 19時