◆ ページ23
デノン「…おい、ワイヤーを刃で切れ」
「そんなことしたらふたりとも死にます！立体起動がなければ私達は…」
デノン「コットに抱き抱えてもらえれば、ガキひとりくらいは何とかなるだろ。男に触られるのが無理だと聞いたが、今だけは我慢して…」
「出来ません！デノンさんを見捨てろって言うんですか！？」
その時、私たちの事を見失っていた巨人が私たちを見つけ、その大きな手を伸ばしてきた。
私はせめてもの抵抗で、座り込んだまま刃を引き抜こうとしたその時、コットさんが巨人の手にアンカーを差した。
コット「俺が気を引く！何とか立て直せ！」
そのまま立体起動に移り、巨人の気を引くために周囲を飛び回り始めた。
「だめ、危険です…」
私の頭の中にある本能的な部分が、赤い警鐘をうるさいほどに鳴らしている。このままだと全滅したっておかしくない。
＿だめ。約束したんだ。生きて返ると。
私の事を信用して指揮を任せてくれたリヴァイさんを裏切るわけにはいかないのだ。
私は冷静さを取り戻すため一旦目をつぶり深呼吸をした。命が危うくなったことなんて、今までだって何回もある。その度切り抜けてきたじゃないか。
深呼吸を終えて目を開けると、私はワイヤーをほどく作業に取りかかった。
デノン「無駄だ。早く、コットが気を引いている内に早くワイヤーを切って逃げろ」
「嫌です」
デノン「…背中を、打ち付けて多分折れちまった。もう俺は使い物にはならねぇ」
デノンさんの言葉に、息を飲んだ。
倒れこんだままのデノンさんは、確かに肩で大きく苦しそうな呼吸をしている。
「…諦めたくありません！」
現実を見たくなくて、私は知らないふりをして再びワイヤーをほどく作業に戻る。
デノン「おい…冷静な判断力を取り戻せ。分かってるだろ、俺の言う通りにするの最善策だって。このままじゃ全滅しちまう」
「黙っててください！」
足がじんじんと痛む。視界が滲んで頭ががんがんと打ち付けられるように痛い。
また、…助けられないの？
その時後ろで、コットさんの叫び声がした。
振り向くと、巨人の手中に収まったコットさんが、泣き叫びながら身をよじっている。
血の気が引いていくのが分かった。見てはいけないと本能で感じているのに、目をそらせない。
デノン「時間がない…おい聞け新兵！」
巨人が口を開いてコットさんが食べられる直前、デノンさんが私の腕を掴んで呼び掛けてきた。
後ろで、骨を噛み砕く音が聞こえる。
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作者名：みみみみみ | 作成日時：2022年9月29日 19時
