茨の君に最上の呪いを【狗巻棘】

29 やりたいこと。2 ページ29

…





「あれ？ 狗巻くんだ」
油が温まるのを待ちながら作業していたら、狗巻くんが覗きに来た。


「どうしたの？」
「こんぶ」



詳しくはわからなかったけど、なにか心配して来てくれたのかな。



「ツナツナ」


油の心配をしながら、ちょいちょいとこちらに手招きをする彼を不思議に思って手を拭いて狗巻くんの方に近づく。




「いくら、つなまよ！」


バーンと見せられたその大きな袋にはたくさんの棒状の紙が入っている。
なんだろうこれ、と見てみると『手持ち花火』と書いてあった。


「手持ち花火……？ 花火って、この間の？」
これは初めて見る。手で持てる花火ってなんだ？


「しゃけ。つなまよ」
やろうよと言ってくれているようだ。


「わあ、いいの？ じゃあ今度みんなでやろう！
……ふふ、今年の夏は楽しいことばっかりだなぁ」



キッチンにあったメモをさしてからメガネのジェスチャーをする。「高菜」

「え？ 真希ちゃんが？」
「しゃけ」



ほわほわと胸が暖かくなる。夏祭りの時も感じた優しい気持ちに、きゅっと胸が痛くなった。


「嬉しい。ありがとう2人とも」




後で真希ちゃんにもお礼しなきゃ、なんていうと「しゃけ！」と笑顔が返ってきた。


いつもはあんまり表情が変わらないから、そんな思いがけない笑顔にキュンときてしまったのは内緒。

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