4.紛らわしい着地点 ページ4
神楽ちゃんは、
「銀ちゃんのせいでお腹減ったネ。
酢昆布買ってくる」
とこの場を後にした。
残された二人の間には微妙な空気が漂い、しばらくの間沈黙が続く。
や、きつい。こういうの苦手なんだって。
なんか喋ってよお願いだから。
そんな願いは叶いそうもなく、坂田さんはずっと一点を見つめている。死んだ魚の目で。
何かあるのかとそちらを見れば、ただの天井があるだけ。
ゴミがついているわけでも、シミがあるわけでもない。
正直言って怖い。すごく怖い。
『俺、実は霊感あるんだよね』とか打ち明けてこないことを祈る。
「あのー、あれだ」
「はい?」
坂田さんはどことなく居心地悪そうにしながら話し出す。
「お前さ、いくら俺のファンでも、流石に寝込みを襲うのはよくねぇよ?」
「はい!?」
ちょっと待って。
話の展開が急すぎて全く理解できない。
私が寝込みを襲っただって?
分からない知らない有り得ない。
百歩譲って、中二の時好きだったオーノ君なら私が襲っても不思議じゃないけれど……。
「私は坂田さんなんか襲いません!
いつの間にかここにいたんです!!」
「その言い方は酷くね!?」
「とにかく、私は知りませんから!」
強く念を押すと、坂田さんは困った様子で頭をポリポリとかいた。
「もしかして、記憶ねえの?」
「んー……まあないですね」
私がここに飛ばされたのは明らかにあの事故が原因だと思うけれど、そんなことを言っても余計混乱させるだけだ。
ここは知らないフリをしておくのが無難だろう。
そもそも私が一番状況理解が出来てないのだし。
「あーそういう感じねえ……
あんたさ、朝俺と同じ布団で寝てたんだよ」
「……は?」
「ほんと『は?』だろ?
そしたら神楽が大騒ぎでさー。俺があんたを連れ込んだと勘違いしやがった」
「で、でも、私ソファーで目が覚めたんですけど」
「そりゃあここまで運んだからな」
「あ、そうでしたか。ご苦労さまです」
って、何がご苦労さまなんだろう。
まるで私が重いみたいな言い方になってしまった。そりゃ軽くはないけどさ!
「だいたい分かりました。ご迷惑おかけしてすみません」
「ほんと大迷惑だぜ。神楽が大声で
『赤ちゃんできてたら責任とるアル!』
って言うから、外の通行人に気の毒そうな目で見られちまった」
「それはそれは……」
坂田さんには甚大な被害を与えてしまったようだ。
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作者名:ミルティ. | 作成日時:2018年12月8日 22時