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「二つの道を与えよう。
一つ目は、このまま一番を使わないこと。
使わないのなら、永遠に生死をさまよう存在となる」
「そ、そんなの嫌に決まってんじゃん！
二つ目は！？」
「一番を使って、生きること」
「じゃ、じゃあそれでいいじゃん！
クラマ、預けてたよね！？出して！」
「.....それで、いいのなら」
クラマが爪で掴んだ札を受け取る。
私が何年も前に預けたこの札。
効力は────
「.....あ、」
『忘却』だ。
「これを、使って生きる、の？」
「そうだ。
それを使えば、お前の力は全てなくなる。
しかし体内の力が完全になくなることで、ワシの持つチャクラと入れ替えることが出来る」
「つか、えば.....」
札を見つめ直す。
『忘却』は、その名の通り『忘れる』こと。
使えば、術者は自分が何者であったかを忘れ、術者に関わった人間は、術者のことを忘れ去ってしまう。
「さぁ、どうする？『余りモノ』よ」
「私は.....」
もちろん死ぬわけにはいかない。待たせてる人が、大切な人が、出来すぎた。
でも、忘れてしまい、忘れられてしまう.....。
その道も、選べない。
「私には、どちらの道も選べない......」
「では大人しくこのまま死ぬほうが良い。
.....人はこの世から消えても、記憶からは消えることが出来ないものだ。
忘れられるぐらいなら、ワシはその道を選ぶ」
そうだ。そうだったじゃないか。
私は、もう孤独にはなりたくない。あの頃には、戻りたくない。
一人は、嫌いだから。
「────でもッ！」
「っ、」
「私は生きたいっ！」
約束を果たさなくちゃならない。
「.....分からぬか、忘れられ」「それでも！」
「────私は、皆と生きたい！
道は必ず二つじゃない！
他の道がないとして、皆の記憶が無くなっても、私の記憶がなくなっても！！
私は、約束を果たしに行く」
六道仙人は目を見開いていた。珍しいものでも見るかのように。
そして、声を立てて笑った。
「はっはっはっ！！面白いことを言う女だ。
────その決意、受け取った」
「.....え？」
一番札が浮かんでいく。
六道仙人が手を掲げ、そして言った。
「これより、
『余りモノ』の力の完全消滅を宣言する」
輝きながらその姿を散らしていく。
「お前のその願い、聞き入れよう」
『一番』は発動しないまま、
この世から姿を消していく。
私の最後の力は、
案外呆気なく、散っていった。
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作者名：MiUmIu | 作成日時：2018年7月22日 18時
