手紙 ページ20
会談後、急いで里に戻った。あの紙人形を握って。
「っと、着いたな......
さて、どうする？我愛羅」
「すぐに上役会議を取り行おう。テマリは上役たちの召集を頼む」
「あぁ！」
「カンクロウは俺と共に裏街へ行こう。俺が戻ってきたら会議を始める」
「了解じゃん！」
テマリと別れ、カンクロウと二人裏街へと向かう。
Aの家に到着。玄関のドアノブを軽くひねると、それは簡単に開いた。
「不用心じゃん......」
「入るぞ、ソラ」
Aの部屋の扉は開け放れ、主はやはりいなかった。
その奥の部屋を開ける。
「......風影、様」
部屋の中央で座り込んだまま、ソラは呆然としていた。
「ソラ、何があった？」
「っ、申し訳ございませんっ！
私が......私がちゃんと見ていなかったから......っ」
「ソラ、お前のせいではない。気にするな」
「いえ、気づく要素は沢山あったのです......。
昨日の祭りのあと、Aさんはすぐに仕事に取り掛かって、綺麗にすべて終わらせました。
それは、今日まで持ち込ませないための暗示に等しかったと、今......」
いつも仕事を滞納するAが綺麗に仕事を終わらす。このことは、自分がいなくなると、初めから計画していたことになる。
更に、残したソラに迷惑をかけないように、と......。
「今、街は？」
「Aさんの失踪については隠しています。いつも通りの仕事をするようにと告げておりますので暫くはなんとかなりますが......」
「そうか......。
先程、レンから預かってきたものがある」
懐から受け取った手紙を取り出すと、奪い取るかのようにソラが食いついた。
「レンは、これになってしまったがな」
「それは......ルルー様の式神術の一つです。いわゆる『影分身の術』と言えるかと」
破れた紙人形は、レンの面影をすっかり消してしまっていた。
ソラが手紙をゆっくりと開く。
流暢な字で、それは記されていた。
『ソラへ
裏街は、頼んだよ』
「......Aさんの、字......」
「自分から消えたのは、間違いないようじゃん......」
「っ、こんなことを頼むならっ、どうして......っ！」
ソラの目から大粒の涙が零れる。
その涙は小さな手紙に大きなシミを作っていく。
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作者名：MiUmIu | 作成日時：2018年7月22日 18時
