言葉 ページ17
「.....え？」
Aは驚いたような表情から変わらない。
俺は続ける。
「幼い頃、出会った時を覚えているか？
誰からも蔑まれていた俺を、Aは救ってくれた。その時は気づいていなかったが、俺はその瞬間から恋に落ちたのだ」
そう、抜け出せないAに。
「風影となって、Aと再会して、この気持ちに気づいた」
胸を抑え、一息つく。
昔は痛みを抑える行為のはずが、今では違う。
「俺は、Aが好きだ」
もう一度言う。先程の言葉を。
「返事は、まだいい。
恐らく.....今、不穏な空気が流れている。互いに、忙しい時になるだろう。
────その空気が晴れた時、Aの答えを聞かせてくれ」
Aの顔を見つめる。
Aは、少し考えた表情した後、にこりと笑った。
「.....うん。わかった」
「.....あぁ。
そろそろ帰ろうか。Aも仕事があるだろう？」
「うわっ、忘れていたのに.....」
足を軽く引きずるAに合わせて並んで歩いていく。やはり下駄は慣れないか。
「痛くないか？」
「なんとか、ね.....はは」
「無理しなくてもいい。ほら」
Aの前でしゃがみ、誘う。
「おぶってやる」
「えっ、い、いいよ〜.....今日食べすぎたし.....」
「そんなことは気にしない。ほら」
重いなら言ってね！とAが俺の首に腕を回す。
キュッと締め付ける力さえ愛おしい。そう考えるのは変であろうか？
.
「.....我愛羅」
「？なんだ？」
「優しいね、君は。昔から」
「.....そうか？」
「そうだよ」
.
裏街に入る。Aの家が見えてきた。
「ここでいいよ。本当にありがとうね！
すっごく、楽しかった」
Aが俺に向ける笑顔が、俺は好きだ。
ずっと守りたい。ずっと。
「あぁ、仕事、頑張れよ」
「お互いにね〜」
Aが玄関に向かって歩き出す。
そのまま中に入るかといった直前、Aが振り向いた。
.
.
「────じゃあね、我愛羅」
Aは、笑っていた。
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作者名：MiUmIu | 作成日時：2018年7月22日 18時
