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「そっか、全部捨てちゃったんだ」
次にヒナに会う頃には、私の心はかなり回復していた。
もちろん春のことを考えない日はないし、夜なんかは今でも泣く。
けど、日常を送れるくらいにはなった。
「うん。ゴミ袋4袋も使っちゃった! ほんと、5年間って怖いね」
春は梵天という反社組織に入ってから、生活水準が上がったらしく、私に頻繁にプレゼントを買うようになった。
おかげでハイブランドの服や鞄を大量に捨てることになってしまった。
売ることなんて微塵も考えなかった。
春が私のことを思って買ってくれたものを、他人が使うなんて許せないから。
「そっか……」
空元気なのがヒナにはお見通しのようで、彼女は寂しそうな顔をしている。
ヒナは私の惚気話の最大の被害者でもある。
"春がかっこいい"、"春に服を貰った"、"春とお出かけした"。
嬉しいことがあれば逐一報告してきたのだ。それも5年間も。
ヒナにとっても、この別れは他人事というわけにはいかないのだろう。
「これでAの惚気話からも解放か〜」
「あはは、どうもお世話になりました」
「全然! 私も聞いてて楽しかったんだよ」
ニコッと微笑むヒナにつられて、私も思わず頬が緩む。
ランチのパスタをフォークに絡ませながら、私はなお春のことを考えている。
どんなに口や行動で春を拒絶しても、心は彼を拒絶できない。
今何してるのかな。
オフなのかな。
だとしたらきっと今頃起きたんだろうな。
それとも、女といるのかな。
その人はきっと、私より素敵なのでしょう。
「はぁ……」
「A……。このあとカラオケでも行こ!」
「いいね! 歌いまくろう!」
ヒナside
努めて三途君のことを忘れたフリをして、元気なフリをしているけれど、私にはわかる。
Aは今もまだ、三途君のことが好きで仕方ないのだと。
思い出の品を捨てたと言った。それはきっと本当なのだろう。
でもAは無意識に昔を羨望している。今までの思い出を、本当は捨てたくないと思っている。
5年間で唯一の、三途君からのサプライズプレゼントであるハート型のネックレス。
名も知れないブランドの、学生相応の値段のネックレス。今のAが付けるにしては少し不釣り合いなネックレス。
それが今も、Aの首元で色褪せることなく輝いている。
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りゆ - 最高… (2022年2月7日 14時) (レス) @page32 id: 84a89ccece (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - 華さん» たくさんコメントくれてありがとうございます!!支えられていました…😌頑張ります! (2022年1月30日 11時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - チョコプリンさん» チョコプリンさんありがとうございます😭これからも頑張ります!! (2022年1月30日 11時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
華 - 祝!完結!これからも応援してます!頑張ってください! (2022年1月30日 9時) (レス) @page32 id: a19f9ab121 (このIDを非表示/違反報告)
チョコプリン(プロフ) - 完結おめでとうございます☺️私は最終話の幸せそうな2人を見れて笑顔になりました🥰🥰🥰これからも応援させていただきます📣 (2022年1月30日 8時) (レス) @page32 id: e53e09d499 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みくる | 作成日時:2021年12月8日 20時