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着いたのは、ホテルの廃墟だった。
「ここどこですか。あなたたちはなんなんですか」
廃墟に入り、ホテルのロビーらしきところのソファに座らされると、ようやく猿ぐつわを外された。
喋れるようになるなり、怒りの篭もった冷静な声で言うと、男のひとりが私の頬を片手で思い切り挟んだ。
「そんなことお前には関係ねぇ。俺たちはただ、お前を始末したいだけだ」
「この辺のホテルの廃墟といえば、センターホテルですか」
「よく知ってんじゃねーか」
私は心の中でほくそ笑んだ。
耐えろ、私。
「そんでよぉ、選択肢をやろうと思ってな」
「今すぐ殺されるか、食われてから死ぬか、どっちがいい?」
「どっちも嫌です」
「そんなに死にてぇのか、あぁ?」
私は軽く呼吸を整えた。
「勘違いしているようですが、私は灰谷蘭さんと何の関係もありません」
「デタラメ言ってんじゃねーぞ! テメェらが2人で歩いてたって目撃情報が出回ってんだよ!」
やっぱり裏社会で名前広がってんじゃん私……。
最悪だよほんと。
ここ半年の私の運どうなってんだ。何か悪いことしたか? いやしてない。
「もう縁を切っています」
「あ? 誰が信じると思うかアホが!!」
「ッッ」
男は私の首を掴んで軽く浮かせた。
苦しさのあまり足をばたつかせる。
「ホントです……」
声を絞り出すと、男は手を離した。たまらずに咳き込む。
「灰谷蘭さんに恨みがあるなら、どうして本人ではなく他人を殺すのですか」
「んなの……」
「灰谷蘭さんには適わないからですか?」
「調子乗ってんじゃねぇぞ」
男は怒鳴るのではなく、心の底から沸きあがる怒りを何とか抑えているというような低い声で言った。
「私を殺して、灰谷蘭さんが苦しむと思いますか? 他人のことなんてどうでもいい。そういう人格だとは思いませんか」
「それは……」
男は一瞬押し黙ったが、すぐに迷いを振り払うように首を振った。
「何が言いてぇんだクソアマ!! 殺すぞ!!」
「だから、私を殺しても意味がないと言っているんです」
「助かりてぇだけだろ。あ?」
「そりゃ無駄死になんかしたくありませんよ」
男は今にも殺しにかかってきそうだ。
そろそろ限界だ。もたない。
死ぬかもしれない。
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まお - 完結おめでとうございます!キュンキュンしながら読ませていただきました。蘭ちゃんの色気がものすんごいのは間違いない(確信) (2022年1月23日 7時) (レス) @page31 id: 4ee49a658f (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - 華さん» ありがとうございます!!良作を作れるよう頑張ります! (2022年1月17日 14時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
華 - 完結、おめでとうございます! これからも変わらず応援してます! (2022年1月16日 23時) (レス) @page31 id: a19f9ab121 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - ゆさん» 最後まで読んでくださりありがとうございます!素敵と言っていただけて嬉しいです!☺️ (2022年1月16日 20時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
みくる(プロフ) - ATR214YSさん» 最後まで読んでくださりありがとうございます!楽しんでいただけて光栄です😌 (2022年1月16日 20時) (レス) id: af4838d834 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みくる | 作成日時:2021年12月2日 19時