出会って六日目 ページ7
九日目、夜。事件は起きた。
執務室で書類仕事を片付けていた俺は、突然大きな音を立てて扉を開けられたことで集中を乱し、眉間に皺を寄せながら面を上げた。そこには肩で息をしながら青ざめた顔でこちらを見つめる男。
「立原ァ、手前幹部の部屋にノックもなしに入ってくるたあどういう了見だ。無作法にも程があるぞ。なぁ、おい」
「す、すんません、中也さん。でも今俺、余裕が...」
「手前が焦ってるのはようく分かったから落ち着け。どうした」
呆れた声で宥めると、何度か深呼吸して立原が言葉を口にする。俺は、咄嗟に脳で処理し切れず、思わず聞き返した。
「わりぃ、もっかい言ってくれ」
「Aが...医務室から消えました」
*
現在時刻、午後23時。首領は既にお休みになっている時間だろう。五大幹部のなかで今日夜勤に当たっているのは俺だけだったはずだ。つまり現状最も地位の高い人間である俺が、私情で、独断で軽はずみな行動をしてはいけない。
わかっている、わかっているが。
身体が勝手に動いていたのだ。
「Aが消えたのは何時からだ!」
「さ、さっき部屋を覗いたら居なくて。他の構成員にも聞いてみたんスけど全員21時以降は部屋を訪ねてないって。俺が、俺がもっと早くに顔を見に行ってれば!」
悔しそうに下唇を噛む立原の背中、不安がるなという意を込めて強く叩いた。彼奴のことだ。勝手に部屋の外を歩き回るような真似はしない。そう考えれば、自ずと何があったのかは推測できる。
おそらく、敵襲だ。
このポートマフィアに奇襲をかけるなんざ命知らずな奴らも居たもんだと思うが、こっそりと忍び込んで抵抗出来ないガキを連れ去る。定石といえば定石だ。
とりあえずは医務室に向かわなければ。手掛かりがない以上、彼奴が最後に居たであろうあの場所から居所を追うしか方法がない。
「立原、手前は部屋付近の廊下で何か異変がないか探せ。俺は中を見てくる」
寝台の中、周囲、包帯が常備された引き出し、暇潰しの本が並ぶ棚。部屋の隅々まで見て回ったが特に変わったものは見つからない。耐えきれず舌打ちをすると、外で立原が何かを発見したような声を上げた。
「どうした!」
「あの、ここ。色が濃いんス!」
廊下には石畳の上に高価な赤紫色の絨毯がきっちりと敷かれている。その一点、立原が示す部分は確かに色が濃くなっていた。この色がこんな滲み方するってことは。
「こりゃ、血じゃねえか」
その血は道のように点々と続いていた。
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苗代(プロフ) - 彩花さん» コメントありがとうございます。これからも頑張って更新していくので、ぜひご贔屓に。 (2018年7月18日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - とっても面白くて一気読みしてしまいました!!!これからも頑張ってください!と (2018年7月17日 15時) (レス) id: 2058922f9b (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 苗代さん» よろしくお願いしますm(__)m頑張ってくださいq(^-^q) (2018年7月13日 18時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - #祭鼓*@harigaya mako*さん» 初めまして、作品を好きだと言って頂けてとても嬉しいです。これからも出来るだけ頑張って更新を続けていくので、これからもよろしくお願い致します。 (2018年7月12日 23時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
#祭鼓*@harigaya mako*(プロフ) - 初めまして(*^^*)こんにちは(・∀・)ノこの作品本当に大好きです(*≧∀≦*)更新頑張ってくださいq(^-^q)応援してます(σ≧▽≦)σ (2018年7月12日 23時) (レス) id: 509492d3f2 (このIDを非表示/違反報告)
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