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ねぇ中也さん、オタクってわかりますか?
はいはい、そうです。アニメとかアイドルとか鉄道とかがぱっと浮かびますよね。特定のジャンルを愛して止まない人のことをいいます。
私はね、そのオタクってやつなんです。アニメや漫画が大好きな所謂誰もが想像しやすいメジャーなタイプだと思います。中也さんは、どんなイメージがありますか?
あ、マイナスなものでいいんですよ。
世間にある一般論で大丈夫です。
そう。あんまり明るい印象は受けませんよね。友達関係も狭く深くって感じ? 確かに多いかも。あとはまあ見た目なんかも、目立つことを嫌って地味にしてる人が多いですね。
そこで、中也さん。私はそんな風に見えますか。
うん、ありがとうございます。実際普段からオタクには見えないってよく言われるんです。嬉しいことですよね。その、言葉だけなら。
ここまでは、長い長い前置きです。
そしてここからが本題。
私が今まで誰にも理解してもらえなかった贅沢な悩みのお話。
彼女はオタクと呼ばれるものだった。その中でも『文豪ストレイドッグス』が大好きで、それが転じていつの間にか中原中也に恋をしていた。
割とよくある話だろうと思う。けれども一つだけ違ったのは、彼女は世にいうオタクと呼ばれる人間のイメージとは少し異なっているということだった。
事実彼女は学校では所謂クラスの中心グループに属するリーダー格であったし、周囲からも可愛い可愛いと持ち上げられ、見た目ではオタクと認識されることがなかった。
だがそれを、どれほどの人間が
努力故の結果であると理解出来ただろうか。
身だしなみに一等気を使い、何度も何度も練習した化粧と日々勉強した流行の服装。体調が悪くても隠し通し、誰にでも分け隔てなく優しくして、好かれるための、愛されるための努力を惜しまなかった。
けれども世間は友人家族に至るまで全員が、それを当たり前だと思ったのだ。日常としたのだ。彼女にはそれが心底許し難いことだった。
『きっと私は他人から見ればとても幸せだった。他人から見れば、ね』
俯き加減にそう言って話の続きを語ろうとする私に、男が待てと声を上げる。言いたいことについては察しがついていた。
『もう少しだけ付き合ってください。中也さんが疑問に思ってること、わかってますから。それについてもあとからお話します』
懇願するような少しだけ震えた声に中原はそれ以上言葉を紡げず、乾いた喉を潤すために、残り少ない珈琲を全て煽った。
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苗代(プロフ) - 斜陽族さん» コメントありがとうございます。最後の最後に一気に更新したので、急ぎすぎてしまった感じは否めませんが、そういって頂けて本当にありがたいです。環境がら多忙なことに変わりはありませんが、これからも作品を書き続けていくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2019年1月3日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
斜陽族 - 読み終わってとっても感動しました!こういう深いお話好きです。発想力があって尊敬してしまいます。これからも無理のない程度に頑張って頂けると嬉しいです! (2019年1月3日 10時) (レス) id: 4feb0da943 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - マッキーさん» コメントありがとうございます。現在とても忙しい状況で、当作品も含め連載中の作品全て手がつけられていないのですが、そろそろ更新を再開していくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2018年12月26日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - 更新頑張ってください! (2018年12月25日 22時) (レス) id: 0346650c4f (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - リツさん» ご丁寧なコメントありがとうございます。主人公の設定は私を自己投影して作成している面が大きいので、読者の方にそう言って頂けてとても嬉しいです。ぜひ最後までお付き合い下さい。 (2018年11月21日 17時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
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