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○△□ ページ19

はくはくと鯉のように口を動かす間抜けな私を
彼は凪いだ目で見つめていた。

「一つ一つの出来事を単体で見れば考えが及ばないかもしれない。だが思い返したものをひとつとして見たとき、手前の言動には不自然な点が多すぎた」

その場から一歩も踏み出しもせず、後退もせず。こちらを見つめて言葉を紡ぐ彼の存在が、私にはだんだんと大きくなっていくように見えていた。

身体のどこかしこも、痛い。

「期待を込めたことを言っておいて、期待に応えられたら困惑するちぐはぐさ。希望を持っておきながら諦めを主体にした言葉の数々。利用していただけだと宣いながら、俺を本気で好きになっている事実」

全部気付いてンだよ、こっちは。

突然全力疾走をしたときのように息が上がる。
なんで? どうしてこの人はこんなこと。

これは私が望んだこと? 違う。おかしいおかしい。

『...いつから』

混乱した頭ではそんな言葉しか絞り出すことが出来なかった。目の前にいる人間が中原中也なのか、この世界が一体何なのか。私自身ですら分別が付かなくなってきていた。

「違和感は約束の一日目からあった。全てを引っ括めた上で結論を出したのは、ついさっきだ」

『...』

「昼の言葉が最大手だった。“どうせ変わらない”。嫌味を込めた諦めの言葉は、手前自身に言い聞かせてるように感じたんだ。漫画の世界ってだけじゃ説明のつかない手前の意思が介入していると直感した俺の勘は、間違ってたか?」

確信めいた言い方に二の句が継げない。

嘘吐きは嘘に使う言葉以外を忘れてしまったのだ。対してどうして貴方はそんなに自由に言葉を扱えるの。それは、本来なら間違いのはずなのに。

堪えていた全てが、震えた声として溢れ出した。

『...だって、しょうがないじゃない。初めてこの世界にきたとき、少しだけ希望を見出してたのに。一度眠ってみたら次の朝に気付いちゃった。裏切られた気分だったんだ。なのに、この世界は私に優しかった。裏切ったくせに、すごくすごく優しかった。勘違いだよって言い聞かせなきゃおかしくなりそうだった』

貴方を心から好きになった。
帰りたくないと願った。
幸せな瞬間が長く続けばいいと思った。

でも。


『それでもここは、この世界は私の夢の中なんだから! 何も変わるわけないじゃん!! 全部全部、私も、貴方も、偽物の嘘吐きなんだよ!』

勢いのまま立ち上がって怒鳴った私に、彼は目を見開いて。


それから、微笑んだ。

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苗代(プロフ) - 斜陽族さん» コメントありがとうございます。最後の最後に一気に更新したので、急ぎすぎてしまった感じは否めませんが、そういって頂けて本当にありがたいです。環境がら多忙なことに変わりはありませんが、これからも作品を書き続けていくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2019年1月3日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
斜陽族 - 読み終わってとっても感動しました!こういう深いお話好きです。発想力があって尊敬してしまいます。これからも無理のない程度に頑張って頂けると嬉しいです! (2019年1月3日 10時) (レス) id: 4feb0da943 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - マッキーさん» コメントありがとうございます。現在とても忙しい状況で、当作品も含め連載中の作品全て手がつけられていないのですが、そろそろ更新を再開していくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2018年12月26日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - 更新頑張ってください! (2018年12月25日 22時) (レス) id: 0346650c4f (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - リツさん» ご丁寧なコメントありがとうございます。主人公の設定は私を自己投影して作成している面が大きいので、読者の方にそう言って頂けてとても嬉しいです。ぜひ最後までお付き合い下さい。 (2018年11月21日 17時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:苗代 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2018年10月29日 15時

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