愛の二日目 ページ13
今朝も執務室のベッドで目を覚ます。
目を覚ます、なんて表現では些か優しすぎるか。きっと飛び起きたというのが自然だろう。胸に手を当てると、酷く速く脈打つ心臓の鼓動が感じられる。
昨日よりも、今日ははっきりしていたな。
考えるのはやめようとぶんぶんと左右に頭を振って頬を叩くと、朝の支度をするために備え付けの洗面所へと向かっていった。
*
ポートマフィアの本部というのも、案外居心地がいいものである。それが客人として招かれているからか、はたまた構成員にとってもそうなのかまでは分からないが。
私の正体に気付いた森鴎外が最初に手配してくれたのは部屋だった。
君は行く場所がないだろうから、ここの執務室を使いなさい。ああ、着れそうな服も幾つか女性構成員が見繕ってくれたから、それもぜひ使うといい。食事は部屋に運ばれたものを食べるように。
至れり尽くせりにも程がある。
私は幼女でもないのにこんなに甘やかされていいものか。
それでも腹は減るし、快適な部屋で過ごしたいし、服も毎日着替えたいし、お風呂にも入りたい。行く宛がないからといって野宿だけは勘弁だと思っていたから、素直にお言葉に甘えている。
朝食を食べ終えて歯を磨いてから部屋を出ようとすると、タイミングよくこんこんっとノックの音が響いた。来訪者とは、一体誰だろう。森さんかエリスちゃんかな。
はーいと間延びする返事をして扉を開ける。
「よォ、準備出来てるか」
『へ、準備?』
突然の言葉に戸惑っていると、私の頭からつま先までさっと見た中也さんが大丈夫そうだなと言って部屋を出ていく。思わず追って、どういうことですかと問うた。
「朝食食べて、準備も済んでるんだろ」
『確かに支度は終わってますけど』
「俺は今日非番なんだよ。今から買い物だ、付き合うよな」
あまりにも手前勝手な考えに少しムッとするけど、無理やり連れ出されなくてもどうせ付き合ったろうし、まず彼がわざわざ呼びに来てくれたことがあまりにも嬉しかった。
喜んでると悟られるのがなんだか癪で、
それを誤魔化すために冗談交じりに揶揄う。
『まさか昨日やたらと仕事に没頭してたのって、今日休暇を取るために仕事を前倒しにしてたんですかー?』
そういうと、男はなんでもないようにおうと頷く。
「元々来週の予定だったんだがな、手前が来たから早めの休暇を申請した」
ぼっ!
『な......』
そんな効果音がつきそうな勢いで、
私の顔は耳まで紅く染ってしまった。
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苗代(プロフ) - 斜陽族さん» コメントありがとうございます。最後の最後に一気に更新したので、急ぎすぎてしまった感じは否めませんが、そういって頂けて本当にありがたいです。環境がら多忙なことに変わりはありませんが、これからも作品を書き続けていくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2019年1月3日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
斜陽族 - 読み終わってとっても感動しました!こういう深いお話好きです。発想力があって尊敬してしまいます。これからも無理のない程度に頑張って頂けると嬉しいです! (2019年1月3日 10時) (レス) id: 4feb0da943 (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - マッキーさん» コメントありがとうございます。現在とても忙しい状況で、当作品も含め連載中の作品全て手がつけられていないのですが、そろそろ更新を再開していくつもりなのでどうぞよろしくお願いします。 (2018年12月26日 11時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - 更新頑張ってください! (2018年12月25日 22時) (レス) id: 0346650c4f (このIDを非表示/違反報告)
苗代(プロフ) - リツさん» ご丁寧なコメントありがとうございます。主人公の設定は私を自己投影して作成している面が大きいので、読者の方にそう言って頂けてとても嬉しいです。ぜひ最後までお付き合い下さい。 (2018年11月21日 17時) (レス) id: 4044429dac (このIDを非表示/違反報告)
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